②明暗馬車の向かうままに

物語?

この世界は何かの物語の世界なの?

私がいないと進まないのは何故なんだろう。


突拍子なラルドの発言に、呆然とする私。

その様子を横目で見たユキは1回ため息をつき、頭を抱えてこう言った。


「これだからラルドは苦手なんだ。感情的になったらすぐ口を滑らすところが」


「私がしったら不味いことだったのでしょうか?

もしかしてそれを知ってしまうと、元の世界に戻れないとか……なっ無いですよね?」


「戻れないとかは無いですけど」


発言しにくいことなのか、急にうさ耳をタレ下げて口を閉じる。そしてチラッと私に目線を向けると、不機嫌そうに顔を下げた。


これは、私の心情か性質に問題があるっぽいな。

興奮すると猪突猛進になるとか、好奇心が勝ると倫理観を欠けた行動をしてしまうとか、うぅ……心当たりが多すぎて困る!


「ああー!勝手に口を滑らせて済まなかったよ。

でも八重は物語の主人公として頑張って貰わないと、俺らは帰れないのは事実だ。いや……責任を負う方があってるか」


ラルドは軽口を叩くような口調でユキに謝罪した後、猛禽類みたいな目付きをし、怒りを抑えるように声を低くさせてこう言った。


「ここは何かの物語の世界で、主人公は私なんでしょうか?責任は、私が不味いことしてしまったからですよね」


「ああっ物語の中で、君は主人公で間違えないよ」


また彼は不気味な笑顔をし、こう答えた。


うっ主人公……責任重大な役柄なんじゃ……。

物語の中の世界だから、主人公が居ないとストーリーが進まないかな?


……後、責任か。

川口彩花も、夜空蕾も、犬神寮も……他の人も、私が何かをしてしまったことによってこの世界に留まるしか無いとか?


更に主人公役が居ないと元の世界に帰るに帰れない。

だからユキはあの手紙を送り、異世界に連れて行くために私を刺して責任を負わせようとしたのか?


いや……この場合、記憶が無い私が悪くて……他の人は贖罪をして貰いたいという方が正しいのかも。


「あの……責任とは?」


私は重たい口を無理矢理開け、2人にこう聞く。


「責任については……主要キャラに配置された僕も……ラルドも説明できません。

それは銀の鍵事件が起こった理由を、主人公である貴女が調べあげて、答えを導きださなければならない規約だから……」


「うむ。すまないがこの世界のルールは絶対だ。俺らみたいなタダの人間だったモノには、覆せるものではない」

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