⑥殺された獣の咆哮
叫んだ拍子に獣たちがごぉおおと唸りごえを上げた。
まるで私の心情を露わにするように。
「あぶなっ!」
だけど思いは届かずラルドは驚いた表情をしながらも、瞬時に手を上げ、胸ポケットに銀の鍵をしまう。
そして乗り上げた時に力を使い切った私は、机の上に右腕だけを伸ばしながら、そのまま身体がへたりこんだ。
「うぅ」
「まっまぁ落ち着いてくれよ。条件次第でちゃんと返すからさ」
「……分かりましたぁ」
「完全にいじめっ子の発想ですね」
ユキはシラケた顔をし、毒を吐く。
「うっうるさい!」
その言葉が少し気がたったのか、大人げない幼げのある怒りを露わにしていた。
最初のクールな雰囲気は、どこかの風に吹かれて綿毛のようにふわふわと消えてしまっているような。
「んで、条件は外にある馬車にでも乗ればいいのですか?」
「そっそうだ。この鍵を返して欲しくば大人しく馬車に乗って着いてきてもらおうか!?勇者よ!!」
「僕達は、ゆーしゃごいっこうじゃないですよ」
ああ、この人ただの中二病とかそうゆうやつなんじゃっ。
「そっその可哀想な目で見るのはやめろ。八重」
なんかこの人に多少大切なもの預けても、悪いことに使われないような気がしてきた。
「ハーイ、あっ朝食食べてからではダメでしょうか?せっかく用意し終わってたり、作って貰ったのに食べれないとかはありませんよね?」
「案ずるな!朝から迎えに行く予定だったから、昨日深夜あたりにお前らの宿泊代の支払いをし、朝食はキャンセルしといたぞ!」
そう言うと、ラルドはしてやったりと言わんばかりのドヤ顔をし、なっははと高笑いし始めた。
「まぁ大丈夫ですよ。多分、昨日の件と、僕達の住処とか、魔法の規約のことを、心配してきただけでしょうしね」
「お人好し?」
私がユキにこう聞くと、うんと頷いた。
なんだよかったぁー……まだ体は拒絶してるけどなんか安心した。
「じゃあ馬車に乗る準備しますね。八重さんも起きてください」
「はっはい」
ユキは席を静かに立ち、私も体勢を整えようとした瞬間、
「やっやえさん……ぁああ」
と耳をピンを上げて変な声をだしながら固まった。
「どうしましたか?」
そういうとユキは顔を逸らし、手をバタバタと動かしてこう言う。
「みみみてないですよ!おおぁ……オレンジのシマシマぁ……なんて!!」
オレンジのシマシマ?
……あっ!
「つぅ!」
私は即座に席に立ち上がり、制服のスカートの裾を手で抑えた。
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