‪⑤殺された獣の咆哮

すると、ラルドは高笑いをし、


「あははっ気になるが私にも分からんな!向こうの自分が目を覚ましたこと自体初めて知ったぞ!」


と自慢げに言い放った。


銀の鍵が異世界に繋がる扉を開くようなものだろうから、鍵をもっていなきゃでれないとかではないの?


それ以外にも。


夜空蕾がバケモノになった訳や……。

川口彩花に何かしてしまったこと……。

犬神寮を拒絶してしまう理由……。


銀の鍵事件の真相も他の人は知っていそうなのに、私には分からない。


そして真相を当事者に聞いても、ラルドみたいに止められてしまうのだろうか?


私を帰らせたくないのか、何かしらの責任をとられたいのか知らないけど、この世界にでるにはラルドが使った方法を使えばいいのか?


いや記憶に障害が入りそうだから安全な方法ともいえないし、先輩との記憶を忘れるなんて絶対嫌だ!


「まぁ要するにラルドさんの場合、正規の戻り方ではないということでしょうか?」


「そうでしょうね。私も起きていたときは驚きましたよ」


ユキは耳をパタつかせて、そう言った。

ここに連れてきた張本人がここにいるのだから、この人に聞けばいいんじゃっ。


「まぁ僕も一定の間と期間でしかあっちに戻れませんからね。詳しくは知りませんが」


「訊こうとしてたことを先読みされた……」


「何となく言われると思ったので先に答えました」


少し嬉しそうに、ふふんとユキは鼻を鳴らした。

そして、黒焦げの本達を自分の手元にひっぱりだし、ペラペラと捲った後、ため息をついた。


「ラルドがこちらに来た理由も、用事も分かりました。昨日のは規約違反によるものですしね」


「ああ!その話も聞きにきたのもあるが……これ」


そう言うと片手で血がついた銀の鍵を強調させ、彼は薄気味悪く微笑んだ。


日光に照らされ、キラキラしている銀色の鍵。


取っ手の部分がひし形に窪んでいるだけのシンプルなデザインで、おもちゃ屋で探せばすぐ見つかりそうなただの鍵なはずなのに。


「返してください!!それっ私のです!!!」


私は叫ばずにはいられなかった。


そうあれは大切なもので、

自分の大切なもので、

他の誰かに渡したくない貴重なもので、


はやく奪い返さないと!


さっきまで怖くて近づけなかったラルドの方へ机を乗り上げ、あの鍵を奪い返してやろうと気持ちに襲われてながら手を伸ばした。

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