‪④殺された獣の咆哮

また笑い声で獣が体を震わせ、こおおぉと吠え始める。するとその叫び声を聞くと、急に彼は笑うのをやめて、


「アイツらの死体なんか集め、臓器をくり抜き、飾ってあるなんて、悪趣味な部屋だ」


と小声で言い、訝しげな顔をして隣にある席に座った。


「そういや自己紹介、まだだったね」


また肉食獣のような不気味な笑みを魅せ、頬杖をつく。


異様なほど不快感を感じる笑みだ。

彼らしいくないような。


彼らしく無理をしているように眉を多少顰め、怒りや哀しみ嫉妬を抑えているような。


具体的にはよく分からないのだけど、確か彼はもうちょっと穏やかな笑い方をしていたし、こんなに大人ぽさは無かったと思う。


私はその無邪気さが苦手だったんじゃないっけ?

でも先輩も無邪気なのにどうしてこんなに違うのだろうか?


「私の名前は犬神寮。こっちではラルドと呼んでくれ」


「……あっ僕のことはユキと呼んでください!」


自己紹介?2人の名前を聞いた後、ままならない気持ち悪さに我慢できなくなり、私は無言で席を立って白うさこと、ユキさんの背後にしゃがみながらラルドを見る。


「よっよろしくお願いします。ユキさん」


「え?……俺は?」


「はいよろしくお願いしますね!八重さん!」


「俺は!?」


耳をピクピクさせて笑顔で返事をするユキに対し、ラルドはミステリアスな雰囲気がなくなり、すごい動揺し始めた。


動揺した様子を見ると、大人びているというより、子供っぽい。


ああーこの人は先輩と逆パターンの人?


先輩は子供っぽさを人の気分を盛り上げたり、悲しんでいる人を喜ばせるときに使いながらも、心の中は芯がしっかりしていて色々考慮できる人で……。


これ以上は長くなりそうだからやめとこ。

先輩の事になると長文になるから注意しないと。


「まぁ……いいよ。よろしくしなくても……」


そんなこんなと考えているうちに、ラルドは顔を下に伏せて涙声をだす。


「あっいえ……先程は失礼致しました。よろしくお願いします。ラルドさん」


「ああっよろしくなっ!」


返事をするとラルドは嬉しそうに立ち上がり、目をきらきらと光らせる。それを見ていたユキは、よかったデスねーとラルドを茶化した。


てか犬神寮さんって……


「銀の鍵事件の目を覚ました人ですよね!!なななななんでこんな場所にいるのでしょうか!?」

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