② 殺された獣の咆哮
この質問に対して白うさは、深いため息を吐く。そして、額を思いっきりドンッと机にぶつけ、顔を上げた。
「その答えは……イエス?」
「……はい」
やっぱり、知り合いだったのか?
自分で言ってみたものの、まだ信憑性がない。
でも、魔法というものがあるのなら、私の記憶を消すことも可能。
いや、学校生活があったという記憶を植え付けられ、こっちが本当の自分という可能性もあるだろうし。
そうなると、1番気になるのは、
「あの……学校がある方の世界が偽りということもあるのでしょうか?」
こうなる。
元居たと認識している世界が実在しているかどうか。
居た世界があるなら、白うさがこの世界から連れてきた理由を調べることと、あちらの世界に戻ること。
居た世界がないなら、何故自分があの場所が有ると誤認識している訳と元の生活があったのかの調査と、今後の生活についてどうするか。
というような目的を決めやすい。
「あっちの世界もあってこの世界もありますよ。どちらかが偽物ということはありません。だから私達の居た世界とは、違う場所に行ってしまったのが正しいと思います」
「じゃあ、白うささんとは覚えのない場面で会ったか、魔法の力で記憶を消されたということ?」
「魔法の力?で消されたというのが正しいですかね。 ……事実を言うとお知り合いどころか、私達は貴女とお友達でしたよ」
そう言うと白うさは耳を低くさせ、少し焦燥露わにした表情で凝視する。
友達。
ともだち。
ト・モ・ダ・チ?
「いや……はぁ?うーん」
私は横目で受け流し、近くにあるイタチぐらいの大きさの熊のような生きものの剥製へ目を置いた。
どちら様だろうか!?
覚えていないこと、友達を殺人鬼扱いしたことへの罪悪感なのか、心臓の動きがヤケに速い!!
バクバクという音と、ドッドっと音が混ざりあったような鼓動の速さが渦巻いている。
そして、暑くなった体温を汗が無理矢理冷やそうとして、身体の中は暑いのに表面は冷えて可笑しくなりそうだ。
「あの、覚えてないことに罪悪感を持つ必要は無いと思います。魔王というのも私にとってはだけで……個人的な恨みがあるからでして……」
その様子を見てられなくなったのか、白うさはか弱い声で震えながら弁解するような、攻撃するような言葉を吐いた。
「わっ私……覚えのない所で!?恨みを買う様な真似を!!」
「えぇ……まぁ」
焦って大きな声をだしている私とは対照的に、白うさは言葉数が少なくなり、体も動かなくなっていく。
更に言いたくないのか口を閉じて開かず、口の代わりに白い耳はピクピクと痙攣し始めた。
気になって、気になって、しょうがない!
自分がやらかしたことが何なのか!?
「あっあの!?」
心臓の鼓動も早々としていき、真実を知りたがって仕方がないみたいだ!!
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