④曖昧な記憶と不安定な魔法の存在

本当に大丈夫なのか?

私がドアを開けてしまったせいで、昨日のような恐ろしい出来事が怒ったりしないだろうか?


白うさの言葉に対して、困惑しながらドアノブに手を触れた。


鉄製のドアノブは、自分の触れた形跡を残し、微かな生暖かさを感じる。


その温度に既視感があり、マグマのようにドロドロと緊張感が音を立てて噴き出した。


嫌なモノを感じる。

何かは分からないけど。


ドアの先へ行くのが怖い。

昨日のような化け物がいるような気がする。


カチャリ。


不安を書き消せないまま、ドアノブを回す。

いつもよりそれは固く、回しにくいように感じた。


「……本当に?」


不安が込み上げてきて、後ろに居る白うさに扉を開けても良いのか確認する。


「大丈夫です。貴方にとって嫌なものはありません」


耳をピンと立たせ、確信するように返事をしてきた。


自分自身の記憶を辿っても、それに対するトラウマは思い浮かばない。


しかし、白うさは……川口彩花は、私に対しての何かを知っているみたいだ。後、夜空蕾もきっと知っているのだろう。


それが銀の鍵事件や別世界に関わることなのか、直接的に自分自身が交わる出来事だったりするのかは分からないが。


きっとあの2人は、私の覚えがないものの正体や、何故覚えていないのか分かっている。


この世界に連れてきた理由も、覚えがないものに関係するかもしれない。


ギギギ、キー。


私は重たい扉を開ける。


そーと確認すると、ランタンが消えていて、薄暗い化け物が居そうな雰囲気を醸し出しているが、白うさの言う通りで嫌なものは無かった。狭い廊下にトランプのマークが掘られている扉が、等間隔に3つあるだけだ。


「よし!」


この世界について、銀の鍵事件について分からないままじゃ嫌だ。


2人の秘密も気になるし、今は進まないとダメだよね!


一歩だけ踏み出してみると、ギギと木が軋む音以外は何もしない。


さっきまで背中を押していた白うさも、歩き出す様子を見て、安心したのかゆっくりと手を離した。


大丈夫大丈夫。

ただの薄暗いだけの廊下だ。

嫌なものは無い。


私はそう思いながら、奥にある階段の場所までゆっくりと歩いていく。


化け物がでてくる様子はなく、外の雑音が聞こえるぐらいで、朝からの不安が何処かへ吹き飛んだ気がした。


そして段々と足早になっていき、意外と呆気なく階段の手前まで辿り着く。


後は降りるだけの所だが、私は階段の前で歩みを止めた。


「あっあの?」


「何も不安なんて無かったじゃん!

さっきまでのグルグルは何だったのだろうか!?」

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