③曖昧な記憶と不安定な魔法の存在

「大丈夫ですかぁー……お腹でも壊しちゃいましたか?」


白うさは左右にゆらゆらと揺れながら、こう聞いてきた。寝ぼけているのか病院服みたいな茶色いパジャマがはだけさせ、右肩を露わになっている。


真っ白な肌。

あの森を執事服で走り抜けたとは思えない細々とした身体。


体格と寝起きの様子が全く逆な所もあるけど、顔付きは先輩に似てるかも?


"無駄な知識も知っておけばいつか役に立つ場合もあるから、後悔しないように調べておくといいみゃ!"


白うさと先輩に重なる部分があるせいか、私の頭の中でこの言葉も重なり流れ出てくる。


「ゔっ」


また、ドアに後悔の気持ちを頭に込めて衝突させた。当たった本人は痛かったのか、バンッという悲鳴を放つ。


「大丈夫ですかぁーお腹でも壊しちゃいましたか?」


白うさは垂れ耳をピクピクと動かし、同じ言葉を繰り返す。


あっ!

今は彼が見ているのだった!


うーん、どうなんだろう?


情緒が不安定なせいか頭がモヤモヤするし、お腹は痛くないような少し痛いような?


「はい、いえ……大丈夫なような大丈夫じゃないような?」


自分でも自身の体調がよく分からず、疑問を疑問で返してしまった。


「うーん?」


すると白うさは頭を傾け、少し目を閉じて考えだす。


だよね。

自分でもこんなこと言われたら、どう返せば良いか考えるよ。


こう相手の気持ちを自分に当てはめてしまうところも、友達に気を使い過ぎる原因なのかもしれない。


「うゔ」


暗い言葉が暗い言葉を生み出し、私の心に襲い掛かってくる。


何でさっきからネガティブなことばかり思いついてしまうのだろう。


まぁ……自分がこんな性格だからなんだろうけど。


こんな悪循環が続いていると、何かを思い出したのか、白うさの白い耳がピンと立つ。


「どうやら異世界転移の副作用を受けているみたいですね」


そして私が不甲斐ないのが悪いのに、気を使ってくれているのか、こんなことを言ってきた。


「いいのです。いいのです。私に気を使わないでください。

私が不甲斐なくて、空気も読めない。事前に調べておくことすらしない自分が悪いのです。

そうですよ。

気も弱いクズ人間のくせに、銀の鍵事件について調べるなんて……ほんと馬鹿がすることですよ。

まぁ調べている理由すらよく分かって分かってないんですけどね。あはは……はは」


全然、笑えない。

寧ろ、これを白うさに言ってしまったことに今めっちゃ後悔してる。


あぁ……やっぱり自分は何やっても駄目だなぁ。


ドンッ。


また扉へ頭突き攻撃をしてしまった。ドアに八つ当たりしてしまうなんて、本当に駄目になっている。


「……ごめんなさい」


私は何もかにも、全ての人、物に生きていることに謝った。


「はい、謝らなくても大丈夫ですよ!もうご飯の時間ですし、下に行きましょー!」


白うさは冷や汗をかき、無理をした笑顔で私の背中を押してくる。


「私みたいな奴が命を頂いていいのかな?」


こんな疑問が浮かび上がり、言葉として発している。頭の中をこのまま発してしまうなんて……私って本当にダメな人だ。


「はい!大丈夫です大丈夫!早く行きましょ!」

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