②曖昧な記憶と不安定な魔法の存在

きっと自分も不安定な者なんだろう。

だから考えないようにしても考えてしまう。


友達と話すときだって、

先輩の悩みを聞き出せないのだって、

私の意思がグラグラと揺れて安定してないからなんだろう。


そして、あの子が変化したのも、自分のせいなのかもしれない。


感情が安定させることが難しいから、感情を爆発させてしまったから。


こうやってぐるぐると1人で考えるのも、不安定だからなんだろう。


……一旦、水を飲んで落ちついた方がいいかも。


真相は分からないのに憶測を張り巡らせたって、答えは証拠が出揃わないと出ないのだから。


意味の無いことを考えたくないなら、他の行動をすればいい。


白くて柔らかい繭から身体を出し、隣のベッドにいる白うさを起こさないように、そーと靴を履いた。


そして、慎重にベッドから立つ。すると、ビンッとクッションの中のバネが伸び、床はギシギシと音が鳴る。


やば!

白うさ、起きちゃったかな!?


彼が寝ているベットの方を覗く。

深々と毛布に包まっていて顔は確認できないが、一定のタイミングで布団が膨らんだり縮んだりしているから大丈夫そうだ。


「セーフ」


私は安堵し、小声でこう言った。

そして足音を立てないように、ゆっくりと扉の方へ歩いて行く。


街の外は草や森が生い茂っているのに、1階のフロントにあるウォーターサーバーしか使える水が無いなんて不思議。


そういや、街中に水路みたいなものも無かったような気がする。


何処から水を取ってきているのだろうか?


「イダッ」


私はドアまで到達していることに気づかず、頭と扉を直撃させてしまう。


「っうー」


前髪を捲りあげ、ぶつかったおでこを触ってみた。指先で強く押すとヒリヒリとした痛みが走る。


「ぐぅ……」


そして打ってしまった悲しみと後悔の余り、口から濁音が漏れだした。


昨日から痛い体験をすることが多い。

運が悪い日なのか?


「おはよぅーございます」


「……お、おはよゔございまず」


音に反応して白うさも起きる始末。

図書室に行く前に、スマホで運勢チェックでもすれば良かった。


いや、普段の私はカルト的なモノを信じるタイプの人じゃないから。運が悪くても何かしらの屁理屈を重ね、苦笑するぐらいだっただろうな。


不可解な事が起こせる魔法が存在した世界のことを、知っていたら話は別だろうけど。


ううん。

それも、屁理屈にすぎないのだ。


私がオカルトチックなものを調べておけば良かっただけの話なのだから。


それにゲームやライト向けの小説は、別世界に飛ばされることが定番だと、友達から聞いたことがある。


私はゲームなんて借りたことがあるぐらいだし、小説も図書室のあるものしか読んだことがない。


もしも読んでいたら、人に刺されて別世界へ飛ばされた場合どうすればいいのか、


上手い魔法の使い方や、どの様な魔法があるのか、


この場合の相手の糸口、目的が予測できたかもしれない。


"無駄な知識も知っておけばいつか役に立つ場合もあるから、後悔しないように調べておくといいみゃ!"


不意に先輩の言葉を思い出す。


「うぅ……」


目の前にある扉に向かって頭突きをし、そのまま凭れかかった。

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