①人間じゃない、ケダモノ
体がユラユラ揺れる。
というより揺さぶられている?
「八重さん、起きてください!」
白うさの声で、私は目を覚ました。
周りを見渡すと、オレンジ色の照明に、壁は赤レンガ。机の上には、空になったティーカップとクッキーが置いてある。そして私は椅子に座ってあり、雨に濡れていた筈の服は乾き切っていた。
「元に戻った?」
「難しいことを聞きますね」
カウンター側から私を揺さぶっていた白うさは、渋柿を齧った後の様な顔をする。
正確には戻ってないけど、ひとまず魔法は切れた、終わったみたいだ。あの蛇みたいな子が居ないみたいだけど。
私は深呼吸し、ついさっきまであったことを思い出す。
あの炎の鳥や黒い猫は、何なのだったのだろう?爆の夢についてもよく分からないし。
それに2人に話しかけられた上に、あんな風に驚かれてしまったのは、記憶を写す魔法じゃ無かったの?
もしかしたら、大切なことと関係するのかもしれない。魔法なんて存在する場所だし、記憶を改変するモノがあるのかも。
それなら白うさが、私を鍵を刺した理由も多少は推測できる。あの2人が驚いた理由も。
「白うささん!もしかして私と知り……ぁあ!?」
私は彼に質問しようと思い、席を立ち上がった時だった。机の下で彼女の体が段々と皮膚に茶色い鱗を浮き上がらせ、服がピリピリと破けながら増幅していることに気づいたのは。
「ぁっあのこれ……ぁあ!?」
心配より恐怖心が勝り、咄嗟に後ずさりして机から離れる。
人間らしい生物が、徐々に他の生物へ変化してる。体がありえない大きさに膨張して、風船みたいにパァンと破裂しそう。
こんなの私の知っている人類じゃない、化け物だ。動物の耳とシッポが付いているだけの人間じゃなかったのか。
ヴゥヴガアア。
ケダモノは苦しそうに吠える。
もしかしたら不意に体が変化してしまっていて、膨張する度に痛いのかもしれない。
なら、元に戻さないと大変!
だけど何をすれば!?
病院でどうにかなる話なのか!?
「白うささん、どうしましょう!?」
私はどうすればいいか分からず、白うさに助けを乞う。
ウガァアア。
彼女は吠え続け、未だに膨張している。
体が大きくなりすぎて、パキッと音と共に机はボロボロに壊れてしまった。
そして、大きくなった指先から爪がメキメキと生えはじめ、背中が突起し始める。
さっきとは違う現象が追追と起きていて、私の恐怖心も増幅されていく。
怖い怖い怖い怖い!!
頭の中が怖いという文字で埋め尽くされ、体があれに近づくこと、助けたいという気持ちより誰かどうにかしてくれという感情に至った。
その様子をみた白うさは、両手を私の両肩に乗せ、肩の力を抜かせる。
「……貴方を少しだけでも心の整理をさせてから出て行きたかったのですが、ここに居た方がもっとザワつきそうですね」
私の焦っている様子に対して、もうやる事が決まっているような言葉だ。
彼は顔をひくつかせながら、無理をした笑顔を向けてこういった。
「逃げましょう!八重さん!」
ガルルと苦しんでいる彼女の呻き声と共に、サイフォンがパリパリと落ち、弾け飛んで割れていく。
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