⑥真っ暗な空に星の光を

思いっきり息を吸って吐き、私は狙いを定める。


獲物はもちろん、川口彩花。

ターゲットは依然として夜空蕾に気を取られている!


狩るなら今のうち!

面白そうだから驚かせてろう!


……驚くのかは分からないけどね。


「わあっ!」


両手で彼の背中を軽く押し、大声を出した。しかし、少しだけ体制を崩して再び元の状態に戻るだけで、大きな反応はない。


まるで何かに引っ張られていて、気づかない振りをするように操作されているあやつり人形みたいだ。


記憶を投影する魔法だからしょうがないか。動画を映し出しているようなものだろう。


私は急に冷静になり、白うさの元へ行こうと振り返った時だった。


「……え?ぁあああああ!?」


突然の奇声が図書室に襲いかかる。その鳴き声の正体は、川口彩花。驚きのあまりか尻もちをつき、私の方を指さす。


「……っうるさいな!」


夜空蕾は本を閉じて、彼の方を見る。すると、彼女はアッアッと口に漏らしがら動かなくなってしまった。


「え??なん……何でそんなに驚かれていらっしゃるのですか!?」


彼等に私の存在が認識されたことと、あんなにビックリされることが意外で、失礼な敬語と疑問を投げかけてしまう。


この質問に2人は困惑気味で、何かごにょごにょと小声で話し出す。


「……ええと?」


横目で白うさの方に助けを求めた。しかし鼻をひくつかせがなら、耳をぴーんと上に伸ばし、それどころじゃない様子。


やばい。

私、ダメなことしちゃったかも。


ここは図書館で本に集中している人が多いから、壁にもたれている様子に気づかなかっただけだったり?


本当は過去に戻る魔法で、人と会うとタイムパラドックスが起きてしまうとか?


でも、白うさは記憶を写す魔法と言った時頷いたよね。なら間違えないのかな?嘘つく理由もないし。


ぁあー!今はそれどころじゃない!

目の前に居る2人をどう落ち着かせるかが問題だ!困惑してる状態じゃまともな話が出来るわけない!


そんなことを考えていた時だった。何処からか小さく、パチパチと何かが弾けるような音が聞こえる。


この音に対し、悪感を抱き始める。恐怖心がジワジワと湧き上がり、体の震えが止まらない。


「どうしたの!?」


2人は私の異変に気付き、心配そうに駆け寄る。しかし、安心するどころか寧ろ恐怖が襲いかかってきて、耳を抑えながらしゃがみこんでしまう。


「hjたぁにらあひ?」


夜空蕾が何かを問いかけているが、伝わらない。声も機械音みたいな造りものに変化していた。


次第にパチパチパチと音が強くなっていく。


……何かが燃えながら落下している。熱に生命の執着心を強く感じる。


暖かいのに心が痛い。虚しいくて寂しい。

後、怖い。当たったら嫌な事が起きる気がする。


だけど。


だけど。


だけど、動けない。


体が震えるほど怖いのに、アレにぶつかれと言われている。ぶつかることで何かが進むことだけが分かる。


パチッパチパチパチパチパチパチパチパチ


もう当たる直前だ。

覚悟を決めて衝突するしかない!


私は固く決意をし、目を瞑った。


さあ!来るならこい!

当たる覚悟はできている!

絶対!大丈夫!


恐怖心を誤魔化す為に、頭の中で覚悟の言葉を思いつく限り絞りだす。


パチパチパチパチパチパチ!


あの変わった鳥と同じで背中から心臓部位へ入っていき、今回はピリピリという激痛がはしりだす。


「ぐぅぅ……」


私は痛みのあまり地面に手をつけ、横に倒れこんだ。


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