⑤真っ暗な空に星の光を
やっぱり!
夜空蕾が探していたのは"爆の夢"だった!
なら、彼女は何でいちいち本を読んでいるのだろう。本の中にヒントはあるのは分かっているけど、それ自体の名前だということを知らないみたいだ。
「探すにしても訳を教えてよ!!僕にも手伝わせてよ!!」
川口彩花が高らかに声を上げた。真っ白な頬が真っ赤になり、彼女のことを心配しているのが伝わってくる。
彼も私と一緒で、夜空蕾が"爆の夢"を探す理由を知らないのか。そもそも"爆の夢"の正体が判明しない限り、訳も理解できないよね。
"爆の夢"について知ってることは、真っ黒けの表紙の本だということだけ。著者名すら分からない。
でも夜空蕾は私と逆なのだろう。
正体は知っているけど、本だということは知らない。
「"爆の夢"は大切なものだから探している……だけど何なのかわかっていない。……でもこれは私の責任だから……手伝う必要はない」
掠れた声で彼女は川口彩花に決意を表意した。返事を聞くと、薄桃色の瞳が潤みだす。隣に居る白うさの表情も曇り始めた。
まるで鏡合わせみたいに、彼女は分かることが私には分からない。白うさの様子も薄暗いものになっていく。
「っぁあ!イライラする!!」
「どうかしたのですか!?」
私の怒号が図書室に響き渡った。隣にいる彼は耳をピンと垂直に立てる。
「急に別世界だし、トカゲの少女がこの魔法を使った理由も分からない!夜空蕾は何か知ってそうなのに何も言わない!」
「あ、あの、す、すいません?」
別に謝罪する必要ないのに、白うさは疑問詞を浮かべながら謝る。
ただ、私が川口彩花と夜空蕾の会話のもどかしさに、腹が立ってしまっただけ。それ以外のことは謎が謎を呼ぶことが多すぎて、声に出さないとスッキリしなさそうだったからだ。
「そしてなにより、川口彩花さんが手伝わせて!とか言いながら何もしない所に苛立っているのです!!」
彼女のことをあんなに心配するなら無理にでも手伝えばいいのに!
「ちょっと行ってきます! 」
私は川口彩花に一喝入れたくなり、2人が居る所へ真っ直ぐ歩く。
「え?えぇ!?今は待ってください!!」
何で止めようとするのだろう?
記憶を投影する魔法だから意味は無いのは分かってるけど、モヤモヤするから仕方ないじゃない!
白うさの言葉を無視して歩き続ける。そして2人の目の前で止まった。
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