④真っ暗な空に星の光を

「凄く元気なお方ですね」


私は白うさにこう言うと、耳をピクピクさせながら苦虫を噛み潰したような顔をする。そして、口を開いてこう言った。


「普段はこうじゃないんですよ!

ただただ……一人でいる蕾を発見すると感 情が高ぶるものでして、身体が勝手に動くというか……なんというか!」


「あーはい」


仲の良い人には気を許してしまう人なんだろう。じゃあこっちの方が白うさのありのままなのか。


……なんだかなぁ。

こう胸に不快感を感じる。


リア充爆破しろというようなものだろうか、人がイチャついている所を見ると身体がメラメラと熱くなる。


今はこの気持ちを気にとめないようにしておこう。そう、あの2人を観察したら彼女が魔法をかけた理由分かるかもしれないのだ。銀の鍵事件に関係することもあったりして。


2人の観察に集中するため、本棚の角から獲物を捕らえようとするカラカルみたいにじーと見た。


川口彩花に振り回されたせいで気分が優れなく、体がふらついている彼女の様子が伺える。


「……いきなりぃ襲ってくるなよ……うぅ」


なよなよと力の無い声をだし、真っ正面にある本棚の方へ倒れる。そのまま彼女は頭をゴンッとぶつけて、額に赤い横線が出来上がり、しゃがんでしまう。


「凄く痛そうですね」


「あれは痛いと思います」


お互い渋い顔をして髪をめくりあげ、おでこを確認し合う。勿論、頭をぶつけていない私達には赤い腫れなどないのだが、目の前で痛そうな人を目撃してしまうと自分も気になってしまう。


「あっごめん!最近、元気が無さそうにしてたから……飛行機ごっこ好きだったよね!?」


川口彩花は夜空蕾に手を差し伸べた。だけど彼女は1人で立ち上がり、無言で本棚を漁り始めた。


「あのー……もしもし!もしもし!」


自分がいると主張するように彼女の周りをジャンプする。白い髪をユラユラと揺らしながら。


彼女は反応しないようにしているのか、本を手に取って読み始めた。黒い瞳を少しだけ薄桃の目へ向けながらも、パラパラとページをめくる。


「あのさぁー無視しないでよ!」


この言葉にも何も言わず、川口彩花は悔しそうに地団駄する。流石に無視することが面倒くさくなったのか、物語の半分まで読み終えると、口を開きため息を付く。


「これも違う……で、なにかよう?」


そして本棚の本を漁りながら、彼女は川口彩花に用件を伺い始めた。


「やっと聞いてくれた!」


返事が返ってきたことが嬉しくなったらしく、体をぴょんぴょんと揺らながら、話を続ける。


「最近、寝てる?図書室に篭もりっぱなしじゃない?」


「最近、寝てるし、図書室ばっかこもってない」


淡々と答える彼女が不服なのか、ジャンプを止めて顔をフグみたいに膨れさせる。


「嘘ばっかり!目にクマができてるし、休み時間になる度にここに来てる事ぐらい皆んな知ってるんだから!」


図書室に篭もりっきりって。

目当ての本があって探しているのかな?


「……嘘をつくなとは言われていない」


屁理屈じみた言葉を言い、川口彩花は悔しそうに彼女を凝視する。


皆んなとは銀の鍵事件に関わりを持つ人なのだろうか。そして彼女が探しているものってもしかすると。


「……それに"獏の夢"は見つかっていない」


夜空蕾はこう言い、新しい本を読み始めた。

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