②真っ暗な空に星の光を

ボロ臭い木製カウンターに、周りには沢山の本。カウンターに小さな少女が本を無表情で読んでいる。


……ここは月夜高等学校の図書室で、私は……刺され……血が……痛っ。


不意にあの出来事がまるで体験しているかのように蘇る。そして、勝手に身体は震えだし、息も荒くなり、直立している状態を意地するのが難しく壁にもたれかかった。


身体を元に戻したい一心で、目を瞑り強く深呼吸をする。


……うん。

落ち着け……違う落ち着いた!


頭を右左に振りまわした後、胸元に握りこぶしを置いて進む決意を漲らせる。


生まれてすぐの子鹿みたいに震えるわけにはいかない!


わざわざ少女が魔法を連れてきたには意味があるはず。生徒手帳の意味もわかってないし!


弱い自分は要らない。もっともっと頑張って強くならなきゃ!


よし!


私は元気を取り戻し、記憶を辿る。

犯人の行動から手がかりや、動機を得る為だ。


確か、"爆の夢"という題名の本を探して欲しいと書かれている手紙を貰って、内容が分かる前に刺されたはずだから。


……もしかしたら、その本について関係するのかも知れない。学生創作本というジャンルだし、銀の鍵事件のヒントになるものが書かれている可能性もある。


爆の夢があるであろう本棚に向かい、ゆっくりと歩く。


すると、目的の場所より左前に、白くて長い耳で執事服の白うさを発見した。


「白うささん?いや……川口さんでしたよね。あれ?それともユキさん?」


私は正確な名前が分からず、呼ばれていた名前を思い出しながら口に出す。


反応したうさ耳がピンと立ち、静かにこっちへこい!と伝えるように手を振ってくる。


なので、さささっと忍び足で彼の背後に着き、覗いていた方向を見た。


するとそこには、長髪の目付きが悪い少女が本を読んでいるだけだった。私は渡されていた生徒手帳で、彼女かどうか確認してみると、写真より痩せているみたいだが"夜空蕾"で間違えない。


学生証の意味はこの中で"夜空蕾"を見つけて欲しかったということか。


後、分からないことは彼女がかけてきた魔法の種類と発動させた理由だ。


元の世界に戻る魔法なのか、記憶を写す魔法なのか、時間を戻す魔法なのか。物語の中やおとぎ話で思いつくのを考え行くとで沢山の種類がある。


もしも、元の世界に戻る魔法だと、白うさがうさ耳のままで、少女があの姿なのかが分からない。後、私をわざわざ連れてきたのに元に戻す意味も不明だ。逃げられたりしたらどうするのだろうか?


次に、記憶を写す魔法だとすると、探偵みたいに身を隠す必要性があるのかが気になる。大体こうゆう系の魔法だと、映像のように投影するだけの場合が多い。だから身を隠そうが、何かを起こそうが関係ないはず。


じゃあ過去に戻る魔法かと言われると違う気がする。その理由はカウンターにいる小さな図書委員が居て、その子は私と同じクラスメイトだからだ。


夜空蕾が読書を楽しんでいるということは事件を起こす前の時間軸。すなわち1年前の話になるはず。なら彼女がいる時点で可笑しいし、出会うはずがない。入学式に居たのもちゃんと覚えている。


あれ?

出会うはずのない彼女がいるということで、3つとも可能性としては無くなるような?


……違う。

魔法という概念が存在しているのだから、記憶を改変する方法があるのかもしれない。


後、白うさは身を隠しているが、私が過呼吸を起こして壁にもたれかかった時に、誰も動揺したり見向きもしなかった。つまり、私の姿は見えていなかった可能性が高い。


と言うことは、記憶を写すような魔法になるのか。


なら、白うさはこの魔法について具体的には知らない?それともバラしたくないから誤魔化している?


次々と新しい疑問が解決したと思ったのに、また増えていく。





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