①赤ずきん少女の不思議なカフェにて
「いらっしゃい。ユキと……えーと、雨宮 八重さん?」
服装は童話の赤ずきんに似せたような格好で、服が大きいのか袖口の辺りから手がでていなく可愛らしい見た目に対して、黒い髪に蛇のようなアーモンド型の赤い瞳で睨みつけ、茶色い鱗がある太いしっぽをゆっくり左右に動かしていて不気味さを感じ取れる行動をとっている。
そして、私の名前をフルネームで知っていることは、白うさの友人と共にこの事件のグルになる。
逃げられもしない、複数人の犯行となると私1人じゃもう手が負えないのではないか。まぁ生死も不明だけど。
「はい……そうです」
私はそう言って、彼女から目を逸らした。
すると今度は白うさを睨みつけ、腰に手を回し一回ため息をついた。
「飽きれた。彼女を巻き込ませるなんて」
少女はまた強く白うさに対して怒り睨みつけた。
彼も友人とはいえ目つきが怖いのか、耳をピンと立たせ一歩下がる。
「だって、主人公が居なきゃこの世界から出られないじゃないですか。」
白うさは言い訳のように人差し指を合わせながらこう言った。
私がここに居たら不味いことがあるみたいだ。
もしかしたら白うさはこの少女に、私を刺すことに関して協力してほしいと頼んだ。しかし、犯罪に加担することはできないと断ったみたいなエピソードがあるかもしれない。
後、さっぱり分からないことは。
「主人公?この世界?」
2つの単語を口にだした。
すると少女は背を向け、肩の力を抜いた。
「1人で抜け出す方法が分からないだけだろ……もういい、少し席に座れ」
そして、そのまま店の奥に戻って行く。
「あっあの!救急箱を貸していただいてもよろしいでしょうか?」
白うさは遠くへ行く少女に向かって叫んだが、止まりもせずに素早く向こうへ行ってしまった。
何かまずい事でも言ってしまったのだろうか?
それともここに来たこと自体が不味かったのだろうか。
不安を抱えながら、荷物用の籠にリュックサックを押し込み、四人テーブルのソファを2人で座る。ソファはフカフカしていてお布団みたいに暖かく、少しだけ落ち着きを取り戻したが、元の状態に戻る程では無かった。
向かい側の椅子に座っている白うさも、何かと動作がぎこちなく緊張しているようだ。
「あの〜……質問してもいいですか?」
私は片手を上げて白うさにこう聞いた。
さっきから分からないばかりで色々と気になっていたところだったのと、気まづい状況を打破する為に。
「えぇ?はい、いいですよ?……できる限りなら」
彼は2回耳をビクつかせ、疑問詞を頭に浮かばせる。
できる限りならというと、答えられないこともあるのか。それは分からないことがあるという意味と、教えたくないことがあるかということになる。わざわざこの言葉を発している場合は、後者に当てはまりやすい。
……あんまり返答には期待しない様に、色々と聞いてみることにするか。
「ここはどこですか?具体的に教えてください」
そう聞くと、白うさは難しそうな顔をして考えだす。
え?悩むことだろうか?
地球のどこら辺にあるとか、何の街に居るとか言ってくれればいいだけなんだけど。
居場所がばれると不味いのか。
ああ、よく考えたら犯人に居場所を聞くこと自体が、相手にとっては怪しい行動なのかもしれない。
「……あの」
「えっと!」
私が白うさに別の質問をしようとした時に、彼も少し遅れて口を開く。何だか気まづく恥ずかしい気分になり、ワンテンポ沈黙する。白うさも同じ状態なのか口を閉じて、下を向いていた。
無音の中でお店のカウンター横にある机に並列されているサイフォンのコポコポというお湯が沸き上がる音だけがこの場所で響き渡る。
サイフォンの音のせいで、早くなにか話さなければならないという謎の使命感と焦りが湧きだしてきた。けれども、羞恥心と焦りのせいで頭がぐるぐると回転しだす。
私は混乱しだしていると、白うさは何かを決意したように、両手で握りこぶしを作り、肩に掲げる。そして私の方を見て、重そうに口を開いた。
「……簡単に言うと貴方が知らない世界で、別世界というべきでしょう!」
と、緊張とは裏腹に、机から立ち両手を掲げるという堂々とした態度で、メルヘンチックな言葉を放つ。
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