宇宙人にさらわれた話

 あれは中学生の頃、わたしは自分の部屋で布団に入ってそろそろ寝ようとしていました。私のベッドは昔の押入れを改造したもので、不思議なことに部屋の隣に位置するベランダへ出られる窓がついていました。

 その家を建てたおじいちゃんは、いつかベランダ部分を増築で部屋にすることを考えていて、その時こちらの部屋と元ベランダの部屋で窓をあけてコミュニケーションがとれたらいいな、と思っていたとのことです。


 とにかく、わたしは窓の横の、元押入れの上に布団を敷いて寝ていました。中学生の時はいろいろなことを考えました。地球はどこにあるのか、私達はどこから来てどこへ向かうのか。なんのために生きているのか。


 その夜も、そうした疑問を頭の中で回しているうちに、どんどん目が覚めていきました。暗闇の中、目は蘭々と輝いていて、こうなったらとことん考えようと思ったのです。


 そして、その瞬間に全てのことがわかったのです。地球が宇宙のどこにあって、その宇宙はどこにあって、神様はどこにいて何をしているのか。私達の生きる意味も、地球にいる全ての生命が産まれた理由も。全ての解が出た時のあのスッキリ感は今でも覚えています。


 スッキリしたわたしは、その感覚を持ったまま寝ました。導き出した答えを忘れないように何度も何度も頭の中で繰り返しながら。


 少し眠たい目を押さえながら起きた翌朝。私の頭の中から答えだけが消えていました。あのスッキリ感も、どんどん冴えて眠れなくなっていったことも、間違いなく身体で覚えているのに。答えだけがどこかに行ってしまっていたのです。


 わたしは思いました。わたしは人類が到達してはいけない所まで行ってしまったのだ、と。そして宇宙人にさらわれ記憶を消されたのだ、と。


 だって起きたら朝だったとかではなく、答えを出した時の身体の震えと、冴えた頭で「さぁ、もう寝よう」と考えたことも全部全部覚えているのに、答えだけがないなんておかしすぎます。


 もっと頭が冴えていたら、答えをどこかに書き込んだだろうとも思いますが……。わたしは結構本気で、宇宙人にさらわれ記憶を消されたと思っているんです。

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