ある日○○を食べている人を見た

 私が昔利用していた、地下鉄H線は結構ヤバイ。たまに乗客にぶっ飛んでる人がチラホラいる。電車内でお煎餅臭がすることはよくあった。そして実際に食べている人をよく見かけた。一度などは柿ピーに日本酒を飲んでいたおっさんもいた。あとびっくりしたのは、隣に座るやいなやケーキ屋さんの箱を開け、その中に入っていた数個のケーキを手づかみで食べだした女性。ガン見したかったけど、隣なのでさすがに見るわけにはいかなかった。私は衝撃を受けながらもクールなふりをしてスマホをいじり続けた。


 その私がH線で二度見してしまったのが、今回の題名になっている人だ。私はその日仕事を終え、H線H駅へ向かった。会社から一番近いH線の階段を降りると、最後尾に到達する。私が改札をくぐるともう電車がきていた。私は小走りをし、最後尾の列車に飛び乗った。


 その時、目の端でドアの端っこに立っている男性がなにかをすすっているのを見た。ん?と違和感を感じ、振り返ると、男性はドアと座席の間の四隅に肩を折るようにしてすっぽりと収まりながら、四角く黒いものをすすっていた。あれは、もずく酢だ!


 とたんに違和感がとけた。いや、違和感はとけてないが、一瞬にして理解した。彼は四角いもずく酢の一角だけをこじ開け、90度傾けてすすることで、箸を使わずしてもずく酢を食べていたのだ。しかも電車の中で、直立して。


 そんなバカなことがあるか?と思うだろうが、信じてほしい。これは地下鉄H線で見かけた、まぎれもない事実なのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る