百合カップルと僕
甘川 十
百合カップルと僕
「御姉様・・・」
「どうしたの・・・後輩ちゃん」
それは百合ヶ丘学園白百合高等学校の中庭のベンチで行われていた。
ベンチには二人の女性が座っていた。
御姉様と呼ばれる彼女は、目の前の女の子にあごくいをかましてる。黒髪ロングで可憐さにかっこよさを併せ持つ。
御姉様と呼ばれて当然の雰囲気がにじみ出ている。
この方こそ『百合ヶ丘学園の御姉様』こと百合先輩。
この学園で知らない人はいない。
「あ・・・あ、あの・・・私たち・・・お付き合いしているんですよね?」
あごくいされているツインテールの美少女は百合先輩の後輩兼彼女である。
ゆえに、後輩ちゃんと呼ばれることが多いのだ。
小さな体躯にハムスター的な愛くるしさを備えている。
「ええ、そうよ」
「ですよね!」
笑顔で質問に対してさらっと返す百合先輩。
その答えにしっかりと反応を返し、百合先輩に迫る後輩ちゃん。
たまに百合×後輩から後輩×百合変わるところが素晴らしい。
無表情な百合先輩と表情がコロコロ変わる後輩ちゃん。
この組み合わせが素晴らしい。
僕はリバもいけるタイプなのだ。
「では!!」
くるっと百合先輩から視線をこちらに向けた後輩ちゃん。
「なんでこの人がずっといるんですか!!」
「ん?」
いったい誰のことを言っているんだ?
「あなたですよ!せっかく御姉様と二人きりのはずなのに!デートの時も学校でもじっと見つめて何をしたいんですか!」
…ああ!俺のことか!なら俺の返答はこうだ。
「気にしないでくれ」
「無理です!」
「なんでだ?」
「分からないんですか?!」
…おかしい、思っていた反応と違う。
ああ、申し遅れた。僕は百合ヶ丘学園の2年生、百合好き男子だ。名前はあるが、割愛させてもらう。他の男子たちと違うところはと言えば、ある一点だけ。ちなみに百合先輩は3年生、後輩ちゃんは1年生だ。
「聞いてますか!」
おっと、百合先輩との絡みがない後輩ちゃんに興味が無さすぎて聞いてなかった。
「聞いてなかった」
「っ!この人は〜!」
「後輩ちゃん落ち着いて?」
「でも!」
そんな僕に助け舟を出してくれたのは百合先輩。
「…この人はどんなことをしても邪魔はしないわよ?」
「そういう問題ではないんですぅ!」
おお、膝から崩れ落ちた。見事なものだ。
と思ったらこっちを向いて立ち上がったぞ。
何か言いたそうだな。
「この際だからハッキリ言います!」
「ほう」
「私は御姉様の彼女です!だから、独り占めしたい!」
直球だな。
「なーのーに!どうして毎回デートの度にいるんですか!」
「それは君たちのイチャイチャしている姿を見るためだ」
「真顔で何言ってんですか!」
むう、本気なのだが・・・
自分の立ち位置を理解してもらえないのがこんなに大変だとは・・・
そんな悲しみ苛まれていると後輩ちゃんは僕を指さしこう言った。
「・・・じゃあ、あなたは御姉様のなんなんですか!」
「・・・見守り「彼氏よ」・・・ちょっと」
何言ってんの百合先輩。
おかげで後輩ちゃん固まってるんだけど。
「いや、先輩僕は別に彼氏じゃ」
「あなたのことを見守りたいって言ったのは誰かしら」
「なあ・・・!」
「いや、あなたたちの百合現場を見守りたいと言ったんですが」
「彼氏になりたいと言ったのはあなたよ」
「ぐぬう!!」
「ストーカーと彼氏どっちがいいと聞かれたらそうでしょう」
「男の中では一番よ?」
「僕は2番目がいいです。友人程度のモブキャラで。あ、彼氏を作るのはNGでお願いします。あと、できれば後輩ちゃんを手放すことはないように」
「当たり前よ。一生離さないわ。もちろんあなたも手放すつもりはないけれどね」
「僕のことは置いておいて、さすがですね」
「・・・うふふ」
「・・・あはは」
埒が明かない。それに後輩ちゃんがもう限界だ。
「もーーーーーーーー!!!」
顔を真っ赤にして百合先輩に突撃する後輩ちゃん。
それを受け止め抱きしめる百合先輩。
いいもの頂きました。
「御姉様!こんな変態に騙されないでください!」
「騙すとは心外だな」
僕は本当のことを言っているだけなんだが。
「うー!とにかくです!!先ほども言いましたが、あなたには負けません!」
「もちろんだ」
「1番は私です!」
「ああ、僕は2番目で十分だ」
だからこれからも僕に百合の現場を見せてくれ。
こうして、百合カップルと僕の日常は続くのであった。
百合カップルと僕 甘川 十 @liebezucker5
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