『錬成術とギルガントの関係』 その7
「シシット。敵はどこにいる? さっさと見つけて、さくっと倒して、帰ろうぜ」
目標がどこにいるのか分からなくとも前に進む。
それがミリアルド・アーシュタインであった。
索敵はシシットなどに任せさえすれば、すぐに目標に到達するからでもあった。
「やれやれじゃ、人使いが荒いのう」
シシット・ブラウナーはぶつくさと文句を言いながらも、
「あっちじゃな」
と、ほんの数秒で索敵を終えて、敵がいるであろう方向で指さした。
「敵は一体か?」
「そのようじゃな。しかし、エネルギー量が尋常ではないようじゃな」
「ほぉ……。どれくらいだ? アイアンウィル・ディメーションと同じレベルか? それとも、俺レベルか?」
ミリアルドはにんまりと笑う。
返ってくる言葉は予想の範囲内だからだ。
「……とはいえ、所詮はわしら以下じゃのう」
「かかっ!! 当然だ、俺達を倒せる奴なんてこの世にはいやしねえ。ギギルガント帝国を支配している奴だって、俺達を見れば、しょんべんちびって命乞いをするだろうよ」
「そうじゃのう、そうじゃのう」
シシットは下卑た笑いを浮かべながら、しきりに頷いた。
「さて、行くぞ。金のためのつまんねえ仕事だけどな!! 開けよ! 俺の翼! 不死鳥の翼フェニックスウィング!」
ミリアルドの声に応えるように、その背中に炎が舞うようにして翼がはえて、火の粉を周囲に散らし始める。
火の粉はミリアルドの身体や鎧などにも付着するも火傷どころか、炎の跡さえ付きはしなかった。
不死鳥の翼フェニックスウィングは、人や人が着ているものなどを決して傷つけはしない。
「飛ぶぜ」
ミリアルドがそう言うと、
「任せた」
シシットが孫におんぶされる老人であるかのようにミリアルドの背中にしがみつき、
「……俺、行く」
アイアンウィルが助けを請う亡者のようにミリアルドの足を掴み、
「乱暴なのは嫌よ」
エメラルダが愛し合う恋人であるかのようにミリアルドに抱きついた。
「あああああ!! いい女が抱きてえなあ!!」
そう叫ぶなり、ミリアルドは不死鳥の翼を羽ばたかせて飛翔し始めた。
「良い女なら、ここにいるじゃないの」
エメラルダが心外というよりは、妖艶な笑みを口元に刻みこんで、ミリアルドを熱っぽい視線で射すくめようとする。
「うるせえ、ビッチ。俺に抱かれたかったら処女になってこいよ」
「いやよ、そんなの。私はあなただけのものじゃないし、今の私こそが最高の私なのよ。なんで、あなた如きの言いなりにならないといけないのよ」
エメラルダは子猫のように甘える仕草を見せながら、ミリアルドに身体を押しつけるように寄せた。
「お前みたいなビッチを抱く男の気が知れねえ。俺は自分に抱かれて惚れ込む女にしか興味がないんでな」
ある程度の高度まで上がると、そこに滞空した。
「……敵はどこだ?」
シシットが指し示した方向を凝視するも、木々が生い茂った山とは違い、茶色い山肌が広がるばかりの不気味な山がある程度で、巨人が歩いている姿を目視することはできなかった。
ミリアルドは訝しげに思い、茶色の山肌の山を凝視するなり納得した。
「野郎、蹲ってやがる。動くのに体力を使うからな。動こうとしないってところか? 図体だけがでかいだけの雑魚が」
ミリアルドは軽蔑をあからさまにして吐き捨てるように言い、茶色い山の方へと向かっていった。
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