『錬成術とギルガントの関係』 その6




「……交渉成立、と。さっさとぶっ殺して、他行くぞ、他。金以外何も得る物がない場所なんてまっぴらごめんだ」


 ミリアルドはやる気がなさそうなけだるい動作で、土遁の術で形作られたパッツィーに背中を見せた。


「パンツがないとやる気がでんわい。ちゃっちゃと片付けるかのう」


 シシットもしょぼくれた様子で、ミリアルドの後に続く足取りがどこか重い。


「……つまらん」


 ミリアルド達を追い始めたアイアンウィルが珍しくぼやいた。


 賢者モードでも、他のモードでもない、どこか失意に満ちた態度であった。


「あ~あ、ただのギルガント退治なんて退屈なのよ。男漁りをしたかったわ!!」


 エメラルダさえふぬけている感が拭えないでいた。


「……お金が全てではないのですか?」


 そんな彼らを見て、当然の疑問をパッツィーが口にした。


 ミリアルド・アーシュタイン達の正体が掴めないのだから、疑問がわくのは必然と言えた。


「はぁ? 金だけじゃつまんねえだろ?」


「しかし、あなたは……」


「ああ、金+αだよ。戦いが終わっても美女が抱けないんじゃ面白みがねえ。金が買える美女じゃつまんねえんだよ。俺を頼ってきた女を抱いて、孕め、孕めとか囁きながら抱くのがいいんだよ。分かるか?」


「……いえ」


「お金だけでは買えないパンツもあるのじゃよ。世界中の女子が金で動くワケではないのじゃ」


 と、シシット。


「……おかず、ない。奮起しない」


 アイアンウィルは肩パットで本当にそうなっているのか不明瞭ではあるが、がっくりと肩を落としているのが垣間見える。


「……はぁ。良い男、どこかに落ちてないかしらね……。とびきり金持ちの男がいないかしらね」


「私には理解できないのです。あなた方が何を考えているのかが」


「俺達は全部欲しいんだよ。それくらい分かれ。金も、女も、酒も、欲しいもの全部欲しいんだ。それが満たされないような案件はやる気が出ねえんだよ」


 ミリアルドは舌打ちをしてから、不満を坦々と述べた。


「俺達は自分達の欲望のために動いているんだぜ。しかしよ、欲望を満たせないんじゃやる気も出ねえだろ」


「しかし、あなた方は依頼を受け……」


「お前達が全財産出さないとか言ってきたら帰っていたぜ」


 ミリアルドはパッツィーの言葉を遮るようにそう言い放った。


「金しかないのは不本意だ。他がねえのは今となっちゃ物足りねえんだよ」


 そう言いつつ、ミリアルドは振り返って、


「俺達は強欲なんだよ。例えるのならば、底が抜けちまった貪欲さだ。もう金程度じゃ穴を塞ぐことさえできなくなってんだよ。女、分かったか?」


 パッツィーを鼻で笑ってから顔を真正面へと戻した。


 そんなミリアルドの背中には、哀愁が漂っていた。


 これっぽっちも欲望を満たせないという悲しみが……。





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