『錬成術とギルガントの関係』 その4
クルーガ王国は広大なアンジャーヌ島の中央に位置する、一時期は島を統一しそうなほどの勢力を誇った王国であった。
アンジャーヌ島には、クルーガ王国の他に三国ほどが存在していた。
クルーガ王国によって追い詰められたその三国が同盟を結び、反撃ののろしを上げた。
同盟を結んだ三国は協力して多方面からクルーガ王国に戦いを挑み、補給路などを断つなどの戦略で立ち向かっていった。
その結果、クルーガ王国は敗走に次ぐ敗走で元々の領土まで撤退を余儀なくされた。
その後、同盟を組んだ三国は追撃の手を休めず、追い打ちをかけるようにして首都まで攻め込んだのである。
だが、その動きに合わせるようにしてギルガント兵団がアンジャーヌ島に上陸した事もあって、クルーガ王国の滅亡は免れたものの、戦乱によってクルーガ王国がどうなったのか、同盟を結んだ三国がどうなったのか、他の大陸に情報が伝播する事はなかったのであった。
「ほい、着いたぞい。ここがクルーガ王国の首都のはずじゃ」
シシット・ブラウナーの転送魔法によって、僅か数秒でミリアルド・アーシュタイン達はクルーガ王国の首都マニアスに到着した。
「どこだ、ここ?」
ミリアルドは軽く首を回した後、状況を探るようにして周囲をさっと流し見た。
視覚により得た情報と、首都という言葉が全く一致せず、別の場所に来てしまったのでは無いかと思ってしまった。
「本当に首都なのか? ただの廃墟にしか思えないんだが」
人っ子一人住んでいないような瓦礫の山が広がっている平地でしかなかった。
ここにもし本当に首都があったのならば、戦火によって焼失してしまったとしか思えない状況であった。
「……おかしいはなかろう。ただ単にクルーガ王国の首都が廃墟になってしまったのではないか?」
シシットは自分の魔法が失敗していないと言いたげに不服そうな顔をした。
「滅亡したのか? なら、もうおっちんじまっているのか、国王って奴は? 俺達が来た意味はなかったって事なのか? くたびれ損かよ」
「……どうかしらね。不気味な気配を感じるわよ。禍々しいギルガントが近くにいるって空気よ、これは」
エメラルダが珍しく眉間に皺を寄せて、嫌悪感を包み隠さずに露わにした。
不吉な予感を元聖職者として肌でひしひしと感じ取っているかのようであった。
「どれほど強かろうが、俺達は勝つ。もちろん報酬分の働き程度で、だ」
ミリアルドは勝利を確信しているかのようにニヤリと不敵に笑いながら、エメラルダが察知したその予感とやらの正体を探るように周囲の気配を探る。
「……つまんねぇなぁ」
不浄な空気を嗅ぎ取るなり、右の眉毛だけを上げて、吐き捨てるように言った。
「首都にいた人間全てを一気に錬金術で錬成したのか。つまんねぇ事しやがる。中には、俺に股を開くことで喜びを感じる女もいただろうに……」
ミリアルドはそう言うなり、嘆息をもらした。
ミリアルドは選ばれた者としての能力を遺憾なく発揮し、エメラルダの察知した予感の正体を即座に解明していた。
廃墟となったであろう首都マニアスのすぐ傍、言うなれば、ミリアルド達のすぐ傍に強大なギルガントがいるのを感知している。
そのギルガントの正体が、この首都で生活していたであろう人々の集合体であろう事も……。
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