『錬成術とギルガントの関係』 その3
「ふふっ、報酬?」
パッツィー・アルマナマは、ミリアルド・アーシュタインを不敵な笑みを見せて、意味ありげに言う。
「俺達は報酬が魅力的かどうかで動く」
ミリアルドはぶっきらぼうにそう答えた。
「……でしたら、これは前金と思ってください。受け取るも自由、拒否するも自由。ただし、受け取るのであれば、クルーグ王国には必ず来てください。私達の依頼を遂行する気があるようでしたら、残りをお渡しします」
「前金があるのか? なら、今すぐ渡せ。それで一考してやる」
若干、ミリアルドの目の色が変化した。
金の匂いを嗅ぎつけて、欲望に忠実になりつつあった。
「私の身体は傀儡です。土遁の術で作り上げられた身体です。そして……」
その言葉を吐くなり、パッツィーの身体が人の肌色から土色に変化した。
「……なるほどな。本体はまだクルーグ王国にいるって事か」
土色となったパッツィーの身体に亀裂が入り始める。
瞬く間に、パッツィーの身体がボロボロと崩れ始めた。
崩壊というのに相応しい光景であった。
土からさらさらと砂のようなものへと変わり、上半身から砂と共に数枚の金貨が床へと落ちていく。
「おお!!」
ミリアルドが歓喜の声を上げると、他の三人もニヤニヤとし始める。
腰の辺りまで砂として流れ出した時には数十枚の金貨が姿を見せていた。
「クルーグ王国への駄賃としては多過ぎかな。なあ?」
ミリアルドがそう同意を求めると、
「……そうね。旅費としては適正価格ね」
「俺、任せる。好きにしろ」
「ほっほっ、これでいたいけな少女から何枚パンツが買えるかのう」
足が砂へと戻った時には、約百枚ほどの金貨が砂に紛れるようにして床に散乱していた。
「行くだけ行ってやろうか」
ミリアルドがもう決定事項であるかのように呟くと、シシット達は無言で首を縦に振った。
「シシット、転送魔法を頼む」
「良いのか?」
「何がだが?」
「そこで寝ている女子は放置してよいのか?」
ミリアルドはパッツィーによって眠らされているシーフィーをちらりと見やり、これといった感情を顔には出さずに正面を向いた。
「男を知らない身体でよ、最初はマグロだったんだぜ。だけどよ、女としての喜びを知ってからは自ら腰を振るようになっていたな、この女は」
「良い女ではないか」
「最初は締まりが良かったんだぜ。けどよ、俺のになじんできたら緩くなってきちまってよ、なんか物足りなくなってきたんだよ。だから、気が向いた時に抱きに来るのが丁度いいかと思ってな」
「好き者じゃのう」
「シシット、あんたはパンツだけじゃ物足りないんじゃ無いか? たまには女を抱いてみるのもいいんじゃねえか? 幸いな事に突っ込んでも起きねえ奴もいるし、どうだ?」
ミリアルドが親指でシーフィーを指し示すと、シシットは眉間に皺を寄せて苦笑した。
エメラルダとアイアンウィル・ディメーションがいても、お構いなしで下卑た事を口にした。
エメラルダは興味なさげな態度を取っていて、アイアンウィルは会話そのものに興味が全然ないかのようであった。
「わしはパンツでしか興奮できぬ身体になってしまってな。それに、穴兄弟になるのは御免被る」
「そうだったな」
ミリアルドはそう言うだろうと思っていたという顔を見せた。
「それでは、転送魔法を使うかのう」
シシットはむにゃむにゃと三人の聴覚でさえ聞き取れないほどのぼそぼそとした声で詠唱を開始した。
そして、詠唱が終わるなり、その場にいた四人は光に包まれて、クルーグ王国へと転送されていた。
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