『優秀な兄PTとクズの弟PT』 その9
「アリーネよ、やるようになったのう。その成長ぶりを確認するためにも、下着を確認せねばなるまいな」
竹箒に乗ったシシット・ブラウナーは嬉しそうに微笑んだ。
「何を言うのですか、この変態ジジイは。その変態行為を二度と行えないよう、このアリーネが棺桶に突っ込んでやるです」
同じように竹箒にまたがったアリーネ・ブラウナーは忌々しげな視線をシシットにぶつけた。
ミリアルド・アーシュタインがラストレギオンの能力を発動させて将軍を周囲のギルガント兵達共々抹殺した時には、もうすでに二人は強大な魔法合戦を繰り広げ終わっていた。
その証のように、地表に展開していたギルガント兵達の屍が累々と転がっていた。
二人は魔法合戦の『ついで』にギルガント兵を殲滅していたに過ぎない。
「さすがは、わしの姪じゃ。きっちりと主張しておる。しかし……」
シシットは顎に手を当て、姪の成長ぶりを喜ぶかのように破顔した。
「しかし? なんだというのです、変態ジジイ?」
アリーネが警戒を怠らずに訝しげに訊ねる。
「まだまだひよっこという事じゃ」
シシットは、ほっほっと快活な老人のように微笑んだ。
「衰えるばかりのジジイと違って、アリーネはまだまだ成長途中なのです。伸びしろはまだまだあります」
「言うのう。で、このような魔法を使えるのかな?」
シシットは右手を挙げるなり、人差し指で天を指し示した。
その指先から光のような球が放出されると、その珠は綺麗な線を描き出す。
そして、魔法の線によって描かれたハートマークができあがった。
そのハートマークをシシットはふっと息を吹きかけると、アリーネの方へとゆらゆらと向かって行く。
ある程度の距離まで来たところで、ハートマークが形を変えていき『LOVE』という単語になった。
「……はい? その程度の魔法がどうかしたのです?」
アリーネは小首を傾げて、胡散臭いものを見るような目でシシットを見やる。
「ならば、これは何じゃろうな」
シシットは俗物的な微笑みを称えながら、左手を前へとかざした。
その手には何か白い布のような物が握られていた。
「変態ジジイ、ぼけたのですか?」
アリーネは哀れみを伴った不思議そうな顔でシシットと向き合った。
「やはり処女は鈍感じゃのう。ほれ、これを見れば分かるじゃろう?」
シシットは手を開いて握っていた物をアリーネに見せつけるように示した。
白い可愛いネコの刺繍がされた白いパンツであった。
そのパンツをシシットはさも当然といった様子で頭にかぶった。
「へ?」
そのパンツを見るなり、アリーネの顔色が一変した。
肌色が顔からすっと抜けていき、キュウリのような緑色になったと思いきや、さっと土色のようなくすんだ色へと塗り替えられていった。
「わしはのう、女子の気を引くためだけに新しい魔法を生み出すことを生きがいとしておった。レンボーロードもそのためにわしが作った。その意味が分かるかね?」
シシットはニタニタと俗物的な笑みを見せつつ言う。
「女子の気を逸らす事ができる魔法、それを使いさえすれば隙が生まれるのじゃ。その隙に女子がはいている下着を魔法でかすめ取れるように、わしはなったんじゃよ」
アリーネの顔色が土色からみるみるうちに真っ赤に染まった。
「わしを変態ジジイ呼ばわりした姪にはお仕置きが必要じゃったのでな。下着を盗むついでに、悪戯をさせてもらった。しばらく苦しむといい。ほっほっ」
「いやあああああああああああああっ!!!」
真っ赤から赤が抜けていき、血の気が失せたという表現そのものの顔色になったと思うや否や、魔法の力が唐突に消失したかのように、アリーネは竹箒と共に地面へと墜落を開始した。
「初心な小娘がわしを倒そうとなどとは百年早いのう。能力はわしよりも上であろうとも、ずる賢さではわしには勝てんよ」
シシットの顔から卑劣さが消えるなり、姪を思いやるような顔をのぞかせた。
「お豆さんにハバネロを塗ったのはやり過ぎだったかのう……」
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