第12話断酒してから「自殺」を考える
しかし断酒してからの数週間、いや半年ほど肉体的にもキツかったが精神的な方が前回の断酒初期よりキツイ感が強いように思う。睡眠も2週間くらいは全く眠れないのは同様だが聴覚的にも影響があった。昼間の生活では気付かないが、夜になって生活音やら世間の雑音なり静かになってくるとともにそれまで気にもならなかった幻聴めいた音がやたらと気になりはじめた。よく言う、人の話し声とか悪口が聞こえるとかいうのではなく、なにかこう飛行機が空を飛んでいる音というか一定した金属音が延々と鳴り響いている感じだ。窓を開けて空を見ても何も飛んでおらず、かと言って金属音を発しているものもない。部屋の中の電化製品だとかの通電している音でもなく耳鳴りのような頭の中で鳴っている感じでもない。確かに自分の中ではなく外部から発しているように聞こえる音が起きている間、延々と続いていた。自分の解釈だがそれまでアルコールによって聴覚もおかしくなっていたんじゃないかと思う。そして断酒してアルコールが体内から抜けたことにより通常では誰もが無意識に聞こえている気にもならない音というものが過敏に自分の脳に反応したのではないか。それから車の運転もこの半年の間に事故は起こさなかったが何度か壁にこすった。小さなキズで済んだだけで充分マシなのだが、これもそれまでアルコールが脳を支配していた状態で運転するのが正常だったという認識を無意識に軌道修正していたのではないだろうか。飲酒生活が当たり前で1から10まで何をするのもアルコールが判断する日常から抜き出たオレはしばらく抜け殻のようだった。まるで頑強な鎧を脱ぎ捨てた落ち武者のようだ。いやもっといえば自分にへばりついていた鎧が皮膚や肉片なども同時にベリベリっと剥いでいったような痛々しく寒々しい、そんな心境なのだ。
そして深刻に考える事がある。「自殺」だ。これは断酒直後から真剣に考えるようになった。これは明確な理由があるわけではないが死んでしまいたいという気持ちが日々募っていくのだ。明確な理由、曖昧な理由、おそらく断酒によるある種の失望感からかこの先死ぬことくらいしかオレには残ってないんじゃないかと考えるようになった。身体的に快調になる一方で自殺を考える。ただネガティブな感覚ではなくてむしろポジティブなはつらつとした気持ちで自殺を思うのだ。そこで思いついたのが「計画自殺」である。
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