第7話愛情という名の脅迫のため
オレの大量飲酒に拍車をかけたのが、やはり現在の家族構成だろう。冒頭でも書いたように高齢出産で生まれ、真綿でくるむように大事に育てられた?一人息子だ。四十を迎えるいい年したオッサンだよ。オフクロだって高齢だし、いつ三途の川を渡るかわからないし、家事全般手慣れてないといけない。しかし、ロクに家のことをやらせてくれないのだ。例えば、何かメシでも作ろうと思い台所に立った時点で「あんたはやらんでいい」、茶わん洗いだって「アタシがやるからあんたは座ってなさい」と台所は女の城だと言わんばかりに阻止する。洗濯や食材の買い出しでも粗探しして難癖をつける。昔の人間だからしょうがないつったらしょうがないんだろうけど、それにしてもウザイの一言だ。”家の事は女がやる"を信条としているかもしれないが、じゃあもし、あんた死んだらそのあとオレたちどうすんの?ってハナシだよ。それでも、無視しつつ家事をしていると今度は我こそはと言わんばかりに先回りしてくる。結局やらせたくないのだ。もしくはこの家族構成の中で自分のテリトリーというかポジションを誰にも奪われたくないのかもしれない。「お前、そんな事言ってありがたく思えよ」なんて方々から言われるかもしれないが、毎日毎日ソレやられてみなよ、いい加減嫌気がさしてくるよ。しかも耳が遠いもんだから大声で言っても本人には雑音にしか聴こえないらしく筆談でしばらくやってたけど、それでも変わらずという具合だから、まあ高齢と元々の性格というのもあるだろうがオレがやりたいんだよ!いったい何が言いたいかというと幼い頃と今現在の感覚がまるで変わらない。親の愛情を感じながらも深く受け止めそれを理解する事ができない。いつも愛情という名の脅迫に押されながら表面上応えてあげる事しかできず、それにはウソをつき誤魔化すことで物事をなるべくスムーズに進行させる。先述書いたように「努力」「挑戦」といった言葉も愛情という名の脅迫に甘いオブラードで包み込まれたなら皆無である。いくつになってもそこから抜け出せない自分と何か新しい自分を切り開きたいというジレンマのなかで酒量は増した。
とにかく飲んだ。4ℓのペットボトルの焼酎は2週間で空けてたのが10日で空くようになりペットボトルの中身が4分の1程度になると安心できず買いに走るようになった。そんな中いまの仕事先から独立して個人事業主というかたちで働き出した。
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