第4話酒と離婚としょうもない

これだけ毎日ようにニュースで流れる飲酒が原因の事件、事故。にも関わらずテレビじゃ芸能人がおしゃれに飲むCMをガンガン流し、スーパーではカラフルなデザインのラベルをまとった酒類がこれでもかってくらい低価格で台頭して販売している。これって一体なんなんだろうね。やっぱ、国税ですか。

その酒にどっぷりハマったオレだがこんなオレでも30の時結婚した。結局離婚もするわけだがその元嫁と出会った時も酔ってて離婚も原因は"酒"だと思う。

結婚とほぼ同時にバンドもやめた。急に飽きたのとその頃の仕事なんてホテトル(デリヘル)の送迎だったから毎日2~3万円は稼げるがなんといっても日銭商売だからね、使うばかりで貯まっていかない。消費者金融からの借金もあったし、しかもできちゃった婚だったから現状を清算したいというか、まさに人生の転機だった。

とにかく給料の良い会社に入り水準を立て直す思いで一生懸命だった。が、酒だけはやめなかった。やめるどころか酒量は増えていった。それまでビールだったのが焼酎に変わった。ビールは割高で焼酎の4ℓのペットボトルの方が度数は高いしなんといっても安い。

結婚生活は決して優雅ではないが新鮮で充実した毎日だった。仕事を終え家に帰れば愛する奥さんが夕飯を作って待っている。そこに幸せを後押しするように酒も待っていた。ソイツを飲み下しながらどうでもいいことでも二人で語らう時間がとても幸せだった。ちなみに元嫁は酒は飲まない。

そのうち二人の娘にも恵まれて家族4人、傍から見ればごく普通の幸せそうな家族に写っただろう。実際、家族ができれば喜怒哀楽様々なことが起こるし一緒に喜び怒り悲しみお互い支えあいながらあらゆる困難も乗り越えていくのが普通の家庭、家族だと思う。

オレはアルコールというオブラートに包まれながら離婚するまでの7年間、家族と歩んだ。オレがシラフの状態で家族と対峙する時間は極々わずかだった。

考えてみると元嫁との出会いも酒に酔い結婚すると決めたときも酔った勢いで、長女が生まれたときもさすがに当日はシラフだったが翌朝病院に行くときも二日酔いの状態で車で向かい次女の生まれた日も朝方まで飲んで酔った状態で東名高速をすっ飛ばし病院に向かった。運送関係の仕事も途中から昼過ぎから夜中3,4時に帰宅するという勤務形態に変わり家族が就寝している間にいい気になって飲み、土日は休みだから金曜の3,4時帰宅後さんざん飲み寝るがアルコールが抜けてない体で家族で遊びに行って日曜にかけて継続して飲むという生活の中で徐々に軋轢が生じてきた。

ほぼ24時間アルコールが抜けない状態での生活はこのころ定着し始めた。アルコールが入ってる状態でのあらゆる物事の判断、行動をするのが正常でシラフの状態が異常であると脳が認識し始める。そんなオレがまともな家族関係を築けるわけがない。


離婚の原因は一般的に相手の浮気とか金銭トラブルとか性格の不一致とか聞くが

結局は日々の生活の中での大なり小なりの様々な事が積み重なっていき、マイナスの方向にどんどん傾き、そして普通なら回避できるような他愛もない事がきっかけで離婚するのかもしれない。ウチの場合もそんな感じだが最大の要因はオレの酒だ。離婚当初から何年かは相手に対しての怒りや憎しみを糧に生きてたようなもんだった。いや、こうなってしまった事の後悔や不甲斐なさと自分に対する怒りや憎しみを元嫁にぶつけていることでなんとか自分の足で立っていた。じゃなきゃ、まともに前に進んでいくことは出来なかった。

酒に酔った勢いで"離婚"という言葉を切り出したオレ。いまさら何言ってもどうしょうもないが、どうしょうもなくていいんじゃないか。とも思う。



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