書籍化記念SS(ベリアル視点)

 ※書籍に掲載したこぼれ話の書き足し部分の、余分だと思って削除した分です。

  290Pあたりです。間にこれがありました。


町へ飲みに来たベリアル殿。適当なお店に入り、お酒を飲んでいました。

隣のテーブルの魔導師らしき男性に話し掛け、子イリヤに教える魔法の相談をしたり楽しんでいたところで、トラブルが。

 


 ★★★★



 いい気分で別のブランデーを追加して飲んでおると、外からうめき声と物音が聞こえた。続いて、扉がバタンと乱暴に開かれる。

 入って来たのは店に似つかわしくない、軽装ではあるが武装した男どもだ。

「騒ぐな!」

 開口一番がこれである。ドアの近くにいた男が止めようとはしたが、殴られて床に倒れた。

 女の甲高い悲鳴が上がり、他の客達も注目している。

「大人しく金を出せ」

 男は五人。二人がカウンターの方へ行き、近くにいる従業員に金品を要求しておる。一人が入り口を見張り、残り二人は客からも巻き上げるようであるな。手際が良い、慣れておるのかね。

 強盗を生業としているのであるかな?


 まずは奥のテーブルへ向かう。ついでに裏口などを確認しておるわ。裏手からは店の用心棒らしき男が二人出てきたが、カウンターへ向かった男の一人が、給仕の女を捕まえて人質にした。故に、手出しが出来ぬようだ。

 隣の席を陣取る三人の魔導師は、護衛らしき剣士を連れて来ている。テーブルの脇に立っておるが、一人だけだ。柄に手をかけて臨戦態勢ではあるが、さすがに魔導師を守るだけに専念するしかあるまい。

 演奏をしていた男は楽器を抱え、顔色を青くして壁にくっついていた。


 しかし、我の楽しみを邪魔するとは。許されざる行為である!

 隣の女は震えて縮こまっておる。さっさと終わらせるかね。

 グラスを置いて立ち上がると、強盗どもの視線が我に向けられた。

「何だテメエ、止まれ!」

 命令される謂れなどないわ。構わずにカウンターへ向かって、ゆっくりと歩く。

「誰に指図をしておるのだね」

「おい、お前! この女がどうなってもいいのか!?」

 女を捕らえている賊の一人が、脅すように細い首元へと剣を突きつけた。細く傷がついて僅かに赤い血が流れ、震える体の振動に揺れる、サファイアのイヤリング。

「構わぬ。我には関係がない」


「た、助けて……!」

 女が涙を流して手を震わせるが、契約もしておらぬ者の懇願など聞く必要もない。

 ペースを崩さずに進むと、相手の方が慌てておる。

「止まれ、おい、聞いてるのかよ……!」

「お客人、人質がいるんだ。とりあえず言うことを聞いてくれ」

 従業員の男が、カウンターの内から宥めるように声を掛ける。男は見せしめとばかりに女を斬りつけようと、手を振り上げた。切っ先が鋭く光る。

「単なる脅しじゃねえぞ!」

「やめろ、おい……!」

 用心棒の男が止めようと走り、店内には布を裂くような悲鳴が響く。

 我は少し手をフイと上げ、賊の武器を持つ手に火を生じさせた。すぐに手は燃え、男は武器を持っていられずに手放した。剣は床に落ちてカランと倒れる。


「うわあああっ、熱い!」

「なんだってんだ? 魔法なんて使われてないぞ!?」

 熱さに暴れながら手を振り回している間に、人質となっていた女は転げるように走って逃げ、大して離れぬ内に床に膝を着く。まさに男に渡す金を用意していた男の従業員が、保護して震える女を少しでも避難させようと肩を抱いて立ち上がらせた。

「どうしたのかね? 何をするのであったかな?」

 闇を移動して賊のすぐ後ろへ跳び、低く囁く。男どもは勢いよく振り返ったと思うと、驚愕して床に尻餅をついておるわ。

 愉快であるな!


「い、いつのまに……!? 誰か、どうにかしろ……っ!」

 仲間の男も狼狽えて武器を構えるが、誰が我に向かうかで揉めておる。その隙に魔導師の護衛である騎士が店の用心棒と顔を合わせて頷き、攻勢に出た。

 戸惑う連中を取り押さえようと切り結んだところで、入口の扉が開く。飛び込んで来たのは騎士。

「あ、アイツらです!」

「もう半分制圧しているな」

 最初に殴られた男が騒ぎに乗じて外へ出て、助けを呼んでおったのか。

 あとは人間に任せておけば良いな。

 我は席へ戻り、次に何を飲むか考えていた。フルーツはまだ届いておらぬ。給仕の女は喋れぬほどに怯えていて、ソファーから落ちて床に座っていた。これでは役に立たぬではないかね。


「……グラスが空いたのだがね」

「いやお見事、ご一緒して宜しいかな」

「構わぬ」

 先程会話した男が、我の席へとやって来た。手にはワインのボトルを持っておる。

「では失礼して……。お嬢さん、もう大丈夫ですよ」

 混乱したままの女に安心させるように言葉を掛けて、我の近くへ座った。男の同行者であった二人は、青い顏をしてその様を眺めておるわ。

「魔法関係に詳しそうであるな、話がしたいと思っておった」

「それは重畳、いくらでもお話しいたしましょう! 後始末は他の者共に任せておけば良いですよ」


 男は従業員にグラスを持って来させて、ワインを注いだ。なみなみと揺れるロゼ。芳醇な香りが鼻先を掠める。

 強盗共は捕縛され、応援の騎士も雪崩れ込んできた。一部の従業員とこの男の連れが対応しておる。

 さて、仕切り直しである。小娘の相手ばかりなど、しておられぬわ。

 とりあえず乾杯でもしようかね。



 ★こんな感じの予定でしたが、まあ本筋と関係ないなと削除★



★★★★★★★★★



記念しょーとしょーと


子イリヤ:イリヤのご本が出ました! イリヤのご本、出ました!

ベリアル:浮かれおって、騒ぐでないわ。そもそも我の本である

子イリヤ:イリヤのご本ですよ。かっかももっと、うれしそうにして!

ベリアル:我の経典とも呼ぶべき本である! 者共、買うが良い!

子イリヤ:もう! かっか、ヘンなことばっかり言ってないで、お礼を言って下さい


ベリアル:王たる我が、いちいち人間に礼など必要ないわ

子イリヤ:読んでくれた人のおかげで、ご本が出たですよ! ありがとうです

ベリアル:これ、頭を下げ過ぎておる。転ぶぞ

子イリヤ:わきゃ、わきゃきゃ!

ベリアル:何をしておるかね、小娘はっっ!

(転びそうになる子イリヤを支えてあげる)


クローセル:(閣下……会話文だけですから、せっかく張り切って着飾っても、全く気付かれませぬぞ……!)



★かっかも浮かれてた!

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