そもそも秋祭りは神事であると同時に男女の出会いの場であった。現代でもそれに近い出来事がないわけではない。それとは別に、日本のどこの地域でも少子、過疎、高齢が深刻化しつつある。
本作は祭りを通じて地域社会の抱える悩みを描きつつ、それを解きほぐそうとする人々の姿が記されている。太鼓にせよ笛にせよ、リズムを合わせるのは日頃の鍛練が肝心だ。……しかし、恋愛には時として不協和音も大切だ。そんな中、わざわざ一番になるよう主人公を激励する親友はかなりの器ではないか。
世の中まだ捨てたものではない、と思わせてくれる快作だった。