最初に言ってよ

ポムサイ

最初に言ってよ

 とある大学近くの昔ながらの喫茶店。客の疎らな店内に2人の女子大生が向かい合って座っている。


「私、弘人君と付き合う事になったんだ。」


「ふ~ん。」


「『ふ~ん』って、もっと興味持ってくれないかな~。」


「じゃあ、おめでとう。」


「それだけ?どこが好きなのかとか普通聞かない?」


「恵美の普通はよく分からないけど、それは私の中では普通ではないわ。でも、話したいならどうぞ。」


「玲ちゃんらしい返しに軽く傷付いたけど、今私は凄く幸せだから許してあげる。」


「はいはい。ありがとう。…で?」


「うん。何か2番目が合うんだ。」


「ちょっと言ってる意味が分かんないんだけど…。」


「例えばね、私がハンバーグが食べたいって思ってたとするでしょ?その時、弘人はパスタが食べたいワケよ。」


「気が合わないわね。」


「最後まで聞いてよ。玲ちゃんの言ったように合わないな~って思って2番目に食べたい物を言うと二人ともお寿司が食べたいみたいな。」


「ああ、なるほどね。」


「この前なんか、一緒に映画行ったんだけどね。私はホラーが、弘人君は恋愛物が見たかったの。でも、弘人君はホラーが苦手で私は恋愛物ってあんまり好きじゃないから、やっぱり合わないな~って思ってたんだけど、お互い2番目に観たい映画を言ったら同じ推理サスペンスだったんだよ。」


「それって1番がことごとく違うんだから相性が悪いとも言えない?」


「そんな事ないよ。どちらかの1番に合わせて片方が楽しくないよりお互いの2番目で2人とも楽しい方が相性が良いと私は思わない?。弘人君もそう思ったから付き合う事になったんじゃないかな?」


「隆幸はいいの?好きだって言ってたじゃない?」


「う~ん。1番好きなのは隆幸君だけど、2番目に好きだった弘人君と付き合うのも悪くないかなって。」


「弘人自体も2番目なのね…。それで良いの?」


「良いの。正直、隆幸君にアピールし続けるのも疲れちゃったし、全然振り向いてくれないんだもん。」


「確かに恵美、ウザい位に隆幸に媚び売ってたもんね。あれは疲れるよ…恵美も隆幸も…。」


「はいまた傷付きました。」


「謝った方が良い?」


「出来れば。」


「じゃあ、ごめんなさい。でも弘人はどうかと思うけどな~。」


「え?何で?」


「それは言えない。」


「何でよ?」


「だって、それを言ったら恵美が傷付いたって言ってまた謝らなくちゃいけないでしょ?私謝るの嫌いなのよね。」


「いいから言って。気になるよ。」


「本当に良いの?謝らないわよ?」


「う…うん…。」


「2番目よ。」


「え?何が?」


「恵美は弘人の2番目だって言ってるの。弘人には将来を約束した彼女がいるのよ。」


「嘘よ。」


「嘘じゃないわよ。その彼女は映画は恋愛物も好きだし、食べ物の好みもぴったりみたいよ。つまり1番が同じワケね。2番目が合うのも確かに良い事かもしれないけど1番には敵わないでしょ?」


「そんな……。あっ!分かった!私が幸せそうなのが悔しくてそんな事言うんでしょ!?本当に玲ちゃんは意地悪だね。」


「本当の事よ。だってその彼女って…」



        私だもの






 

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