セカンズ 二番目の刺客

軽見 歩

Project Seconds

「集まったか」


「ああ、お前で最後だ」


 廃墟だったオペラ会場を改装した集会場、そこに各犯罪組織の幹部連中が揃い会議が始まっていた


「我々は奴らは組織オリハルコンに煮え湯を飲まされてきた」


「縄張りも客も、政界へのコネクションまで奪われて、もう俺たちゃ虫に息だ」


「このまま息絶えるか、オリハルコンに吸収されるか・・・・。どちらの道も我々は選ぶ気は無い」


「そうだ! 今こそ反撃を!」


「だがオリハルコンには世界一と名が高いヒットマンが居る。組織を守る奴をまず始末せねばな」


「その為の今回の計画だ。俺の組織からは」


 一人の男が資料を取り出テーブルに投げだす


「イワン、狙撃の使い手だ。狙撃の際は光の反射を警戒してスコープを使わない程だ。だが実力は組織で二番目」


「なぜだ? その意味不明なこだわりのせいか?」


「いや、頭が禿げてて光が頭皮に反射し狙撃位置がばれるからだ」


「じゃあ帽子被らせろ!」


「帽子は無理だ。頭にたった一本生えているの髪の毛で風力を測定し、風を計算に入れて弾道を修正し狙撃するスタイルだからな」


「虫の触角かよ」


「だが狙撃位置がばれると言うスナイパーにとって最悪な状況でも仕事を成功させてきた。狙撃技術だけならトップの男を越えているとも噂されている」


「それは頼りになりそうだな・・・」


 一人目の紹介が終わり、次の男が資料を取り出しテーブルに投げだした


「俺の組織からはこの男だ。イングリッシュ・ポンド、元諜報部員で敵の組織に侵入しては諜報活動そっちのけで情報もろとも組織を破壊して回り、結果、逆に自分の組織に追われる身になってしまった所を拾った。諜報員としては三流以下だが、ヒットマンとしては実力二番目よ」


「どうして二番なんだ?」


「女グセが悪くてな。仕事中に必ず女に手を出して、捨てられた女共が作った諜報組織のネットワークに絶えず見張られている」


「使えるかそんな男!!」


「だがそんな最悪な状況にもかかわらず、仕事は成功させ、女も必ずモノにするその実力は俺の組織一番の者も超えるんじゃないかって話だ」


「女はいらねえだろ! とんでもねえ女たらしじゃねえか!! 殺しに集中させろよ!」


 二人目の紹介が終わり、次の男が資料を取り出しテーブルに投げだした


「うちの組織からもこのエージェントを出す」


「今度こそまともな奴なんだろうな?」


「ああ、こいつは凄いぞ。なんたってコイツは写真を見ての通りの通りフクロウだ。コイツを見て誰も暗殺者だとは思うまい」


「ついに人間でもなくなったぞ!」


「そこがヤツの強みだ。暗闇の中静かにターゲットに接近し始末する。評価はナンバー2だが実力は確かだ。引退して正体を隠し日本で喫茶店を経営していたが、今回特別にこの仕事を引き受けてくれたよ」


「色々ツッコミたいところだが・・・、なんで評価がナンバー2なんだ?」


「珍しいフクロウでな。国外に持ち出そうとするとジュネーブ条約に引っかかる。今回も大変だった」


「ああ、そうかい。 ・・・俺の組織からはコイツだ」


 今までツッコミに回っていた男が資料を取り出テーブルに投げだした


「こいつは?」


「ヘルメスと名乗る暗殺者でウチの組織では2番目の実力者だ」


「なぜ2番目なのだ?」


「昔ファウストと殺りあった時に片腕を無くしてな、そのせいだ。今は復讐に燃えて今回の仕事を快く引き受けてくれたよ」


「それだけか?」


「なんでもこなす優秀な暗殺者だ。実力は保証する」


 ツッコミ男の紹介を聞いて、他の組織のボスたちはため息をついた


「はぁ・・・」「はぁ・・・」「はぁ・・・」


「なんだよそのため息は!」


「悪くは無いのだがもっとこう・・・、何か居なかったのか?」


「これが普通だろ! むしろ濃いくらいだろうが! ターゲットと因縁がある隻腕の暗殺者だぞ!」


「しかしなぁ・・・」


「頭に触角生やした禿げスナイパーと! 女たらし全世界指名手配のぶっ壊し野郎! あげくにフクロウ! そんな奴らと張り合えるヤツを用意しろってか!? ちゃんと実力で選んでんだ!文句言うな!」


 息を切らすツッコミ男を放っておいて話は進んで行った


「なんにしてもだ。ナンバーワンの実力者を出すとこちらの組織の防御が手薄になる。その事を踏まえた人選と言う訳だ」


「きっと彼らなら良い結果をもこしてくれるだろう。今度こそファウストを亡き者に! そしてオリハルコンを壊滅だ!」


「すでに彼らは任務に当たっている。じきに報告が来るだろう」


「プルルルル・・・・」


 テーブルに置いてあった秘匿回線の電話が鳴り、それぞれの組織のボスが受話器を取った


「報告です」


「聞こう」


「ファウスト暗殺に向かったエージェントですが・・・」


「うむ」


「全員殺されました」


「なにぃ!?」


 その報告を聞いて一同騒然となった


「それは確かか!?」


「はい。・・・・いえ!待ってください、フクロウは生きていたようです」


 ツッコミ役のボスは声を荒げた


「なんで!?」


「現場にファウストの伝言が残されていました。私は人殺しだ、動物殺しではない・・・と」


 その報告を聞いた他の組織のボスが静かに頷いた


「そういえばファウストはベジタリアンだったな」


「そんな理由で助かったのか!? 女子供は殺さねえとはよく聞くが、ベジタリアンだから動物を殺さねえ暗殺者なんて聞いた事もねえよ!!!」


 ツッコミの声が難なく無視され、受話器の向こうから報告は続いた


「早くボスたちも逃げてください! フクロウが言うには情報が漏れていたようです! 早くその場から・・・」

         「バン!」


 銃声とトマトが弾ける様な音がして通話は切れてしまう


「・・・・・・作戦は失敗だな」


「ああ。ファウストに狙われてはどこに居ても同じ」


「逃げるだけ無駄だな」


「それはそれとして・・・、フクロウが言うにはってなんだ、そのフクロウしゃべるのか?」


 ツッコミのボスの質問に、フクロウを派遣したボスは・・・


「・・・・・・」


 ・・・黙り込んでいた


「何かしゃべれよ!!」


 ツッコミの声と共に、ドアが蹴り破られファンストが彼らの前に姿を現した


「皆様ようこそお集まりくださいました。ではお休みの時間です」


「バン!」 「バン!」 「バン!」

    「バン!」 「バン!」


 ファウストのその言葉と共に銃声が鳴り響き倒れた・・・・、ファウストが


「なぁ!? その動きはまさか!?」


 銃撃を食らい驚くファウストにそれぞれの組織のボスと思われていた男達は近づき、見下ろしながら言い放って行った


「それぞれの組織の実力ナンバー2の殺し屋を差し向けて貴様を暗殺する。それはブラフだ。本命はこの第二プラン」


「情報を掴んだ貴様が俺達を暗殺しに来るところをだ、ボスになりすました組織ナンバー1の実力の暗殺者で仕留めるこの計画こそが本命だ」


「俺達は組織を守る役目が有るから下手に動けねえ、ならターゲットの方からこっちに来てもらおうと言う訳さ。1番目の釣り針を避けた事にいい気になって、見事2番目の釣り針に引っかかったんだよ貴様は」


「それじゃ死ね。ボスがよろしくとよ」


「バン!バン!バババン!バン!」


 ボスに変装していた暗殺者達はファウストに止めを刺し変装を解いて、意気揚々と次のターゲットに向かっていった


「ファウストは始末した。残るは組織の方だな」


「よし!皆行くぞ!」


「オリハルコンを壊滅だ!」


「よっしゃあ!」


 こうして暗殺者たちは犯罪組織オリハルコンを乗っ取り、元に居た組織を捨てて新たな王座に君臨しましたとさ




END

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