第3話電神雷神


ピカッ。ゴロゴロゴローー。

 ズドーーンズドーーンズドーーン。メラメラメラ。

「おい家燃えてるぞ。誰か早く消防署に連絡を」

「もしもし。火事です。すぐ来てください。はい。お願いします」

「また火事かよ。最近落雷による火事が多いな」

「そうだよね。やっぱり地球温暖化か何かが影響してるのかな」

「神様がお怒りなのじゃ。我々の悪事に起こっているんじゃ」

「まさか。そんなことあるわけないよおばあさん。多分、異常気象が原因だと思うよ」

「祟りじゃ。祟りじゃ」

「おばあさん落ち着きなって」

「あっ。消防車が来たぞ。こっちだ。早く」

「早く火を消すぞ」

 プシャーー。プシャーー。

      ・

「子供だけは助けてあげてください」

「奥さん大丈夫ですか。脱出しますよ」

      ・

「ああ。よかった二人とも無事か」

「あなた。家が火事で。ううっ」

「家は大丈夫だから。それより二人が無事でいてくれてよかった」

「すぅーすぅー」

「杏梨は寝ているな。よかった。ひどく辛い思いをしなくて」

      ・

 とある神社では、暇な三人が、今日も地球上の出来事を話したりしていた。

「最近落雷が多いらしいわよ。なんだかありそうじゃない」

 最近というか、ここ二週間で落雷が急に多くなり、それによる火事は百件を超えるらしい。

「そうだな。もしかしたら神が暴れてたりしてな」

 雷神や電神ならがふざけあって落雷を落としているなんてことが考えられる。神とは人間の信仰から生まれたものの他にも、人間が勝手に異能を持ったものを神としたものがいるから、好き勝手やる奴が少なからずいるのだ。

「どうやら最近の落雷は、神によるものらしい。普通の落雷とパワーが違う」

 異能の持ち主とだけあって、力はとんでもない。

「そうか。ならちょっとその神さまに会いに行くか」

 暇つぶしのついでに、そいつらを懲らしめに行ってくるか。と。

「そうね。これ以上被害が出てしまうのはまずいしね」

「よし。決まりだな」

 さあ行くか。

 この時は、誰も街が消えかかるなんて知る由もなかった。

      ・

「いやーー、意外と楽しいなこの遊び」

「なあ、そうだろう。上空千メートルから一つの家を狙いに定めて雷を落とすってゲーム。俺って天才だな」

「今頃人間たちは神様が怒っているだとか、地球温暖化が原因だとか行ってるんだろうな。それ考えただけでも笑えてくるわ」

 彼らは決して人間の行動を怒って罰を下した訳ではない。ただ単に、遊びでやっているだけなのだ。子供のように。無邪気に。

「こっちは遊びでやっているのに、そんな風に考えてるなら神様って何やってもいいんだな。あははっ」

 神二人は笑った。

「な訳ねーだろうが」

 そこに高柳の声が響いた。

「誰だ?」 

 電神が言った。

「何者だ!」

 続いて電神が言った。

「我は高柳と呼ばれるものだ。

 神である」

 貴様らと同じ神だ、と。

「貴様も神なのか」

 同類を見るように言った。

「お前も好き勝手やって生きてるんじゃないのか?」

 私たちのやっていることの何がおかしいのだ。神とはこういうものではなかったのか。

「馬鹿じゃないのか。お前ら子供か。好き勝手やりたい気持ちもわからなくないが」

 子供だったらな。はははっ、と笑いながらいう高柳。

「子供じゃないわ。馬鹿。とっくに五百歳は越しているわ‼︎」

 中身はちゃんとした大人だ。

「我々は神だ。人間と一緒にするな」

「子供と言って、そんな風に否定するのもますます子供っぽいな。親から人に迷惑かけちゃいけませんよって習いませんでしたか?」

 二人を馬鹿にする高柳はとても楽しそうだが、彼ら二人はとても怒っている表情をしている。

 そんな顔するからからかわれるんだよ、とユウナとかずきは心で言いつつも、

「その辺にしなさい。高柳。本来の目的見失うんじゃないわよ」

 ほーら怒られてやんのー、とか背後から聞こえてくるのをこらえながらも、確かに本来の目的を忘れていた。危ない危ない。このまま怒らしたまんま帰るとこだった。これでは被害がますます出てしまうとこだった。

「すまんユウナ。さて」

 一息置いて。

「おい風神雷神」

「違うわ。電神と雷神だ」

 イライラしながらも、声を合わせて言う二人。

「なんだかめんどくさいなぁ。なんでどっちも電気なんだよ」

 どっちかは風を操るべきだろう、と高柳は言う。

「しょうがないだろ。仲がいいのがどっちも電気だったんだから」

 へえ。そんなこともあるんだな、と高柳は思いながら、

「お前ら仲いいのはいいが、最近落雷を落としすぎてねーか。本来なら、必要な分だけ落とすはずなのに」

 雷とは本来、神が定期的に空に溜まった電気を落雷として使うことで世界が回っているのだ。だから、落としすぎるのは良くない。危ないから。

「だから、神だから何やってもいいんだよ。だから、好きな時に雷を落とすくらいいいだろ」

「だから、それが良くないってさっきから言ってるんだ。そのせいで人間は困ってるんだ」

「いいだろ。人間なんて。結局は自分たちのことしか考えてないんだから」

 なにかを思い出すように下を向く二人。

 そうか。二人には、なんか過去にあったんだな。

「だけどな。良くないんだよ。一応人間は生き物であるんだし、さらに、ほかの動物や植物とかも困っているんだからな」

 そして、一息置いて厳しい顔にして、

「お前らにどんな過去があろうとも、ダメなものはダメだ」

「わからない。わからない。人間みんな復讐したりして、犯罪に手を染めたりしてんじゃん。それで無実なんてことも。汚いんだよ人間界は。だから人間なんてどうでもいい」

 そして二人で電気みたいなのを集めて、

「この気持ち、わかんない奴みんな死んじゃえ」

 バチィーーーーーーー。

 

 

 しゅうしゅうしゅうしゅう。

 バリアで先ほどの電神雷神による攻撃がガードされたようだ。ユウナに、いつもありがたいと思いながら、

「なるほどな。お前らの言いたいことは良くわかった。なら、わかるまで立ちはだかってやる」

 かかってきやがれ電神雷神。

 戦闘が開始された。



 遡ること約六百年。

 その時代は時々異能を持った者が産まれて来ることがあったそうだ。

 その時代には争いが絶えなかったそう。その中で、時々異能の持ち主が争いで活躍していたそうだ。しかも、能力者同士の争いも時々あったらしい。

 

 その時代のある時。

 ある国では山火事が絶えなかったらしい。その火事の原因は落雷であった。災いを納めるために、ある男が立ち上がった。そしてその男が山に向かって、

「貴様らに体を与える。」

 そう言っては、たちまち火が消え、雷雲が消えた。さらに驚いたことにそこに二人、風神雷神ではなく、電神と雷神が産まれたのである。

「これで落雷による災いは無くなるはずでしょう。」

 そう言っては彼は姿を消した。

 ちなみに、なぜわざわざ二人にしたのかと言うと、単なる彼のミスではある。しかし、そのミスが吉と出て二人に力の分散が出来たのだ(もしかしたら、計算してのことだったのかもしれないが)。このおかげで、みるみるうちに、落雷の災いは無くなっていった。

 それからと言うもの、彼ら二人を神様として人々は祭り上げた。その時、二人とも子供の姿であり、幼かった。

 しばらく平和は続くのだが、こっからが問題であった。

 七年後。

 彼らはすっかり成長して、今で言ったら小学一年生である。

この頃の子供といえば、大人の行動をよく見て真似るものである。

 彼らの住んでいる町では、

「そろそろ戦が始まるらしいよ」

「年貢が重くなったなあ」

なんで声が度々聞こえてくるのを彼らは聞いていたそう。

「いくさとはなんじゃ」

「ねんぐがおもいとつらいのか」

 彼らは様々なことに疑問を持ち、ある時、上空に行き、当時の争いを見に行った。

 そこにあったのは、普段転んだ時とかに傷から出る赤い液体

「血」みたいなのがドロドロと水溜りのようにそこら中にあったり、なにやら黒い髪の毛の塊みたいなのが落ちてたり、刀、鉄砲が落ちてたりしていた。

 彼らにはまだなにがなんだか分からなかった。多分なんか楽しいことがあったんだなと思っていた。

「あっ。ねーねー、でんちゃん。あそこでおとなのひとがねてるよ。」

「あはは。らいくん。こっちでもかさなってねちゃってるよ。かぜひいちゃうね。」

 おとなって意外と子供っぽいんだなぁと思ったりしていた。

 しかし、そんな風に考えられるのはこの時までだった。彼らが変わったのは、ここから先のことを知ってしまったから。

「大人」を知ってしまったから。

「ぐははっ。討ち取ったり」

「無念」

 ザァン ピチャピチャ

「ワレラノカチダーー‼︎」

「ワーーーー‼︎」

 後ろから歓声が上がった。

 これで我々は助かった。彼らには申し訳なかったけど、しょうがない犠牲だ、とか、馬鹿らしい声があちこちから聞こえてきたりした。

「えっ。」

「あっ、あっ、あっ。」

 彼らは言葉を失って立ちすくんだ。

 そしたら後ろから、

「お前らはなんだ。敵か。えっ。えっ。怖くて動けないか。」

 おとなって、大人ってこんなものだったの。

「今、あの大人の人、人斬ったんだよね。殺したんだよね」

 震えながら、恐る恐る聞いてみた。嘘だと言って。おとなは、大人はこんなんじゃないってお願いだから言って。お願い。

 しかし彼らの願いは叶わないことは気づいていた。言葉に出ていた。

「ああ。そうだが」

「ーーー‼︎」

 いやだ嫌だ嫌嫌嫌嫌ーーーー。

「はぁ、はぁ、はぁ」

二人とも息が上がっている。

 無理もない。なにも知らない子供がこんな場面を見ては普通でいられるはずがない。

 そうだ。さっき見た赤い液体は「血」なのだ。人間が殺された時に出てくる血だ。そして、さっき寝ていた大人の人は、寝ていたわけではない。殺されて倒れていたのだ。髪の毛の塊みたいなのは、もしかして人の頭なのだろうか。そうなのか。そうだったのか。

「お前らは敵なのかどうか聞いているんだ!」

 やばい。ここから逃げないと、さっきの人みたいに殺されてしまう。早く逃げないと。どうしよう。どうしよう。

「まあ、一応殺しておくか。生かしておいても辛いだけだろう。武士の情けだ」 

「電ちゃん逃げよう」

「に、げな、きゃ。逃げよう雷くん」

「逃げてもムダだ。ここで死ね」 

 やばい。切られる。その刹那、刀が彼らの体をすり抜けたのだ。

「なにぃ。まさかお前ら能力者だな」

「えっ。僕死んでない」

「私も死んでない」

 なにが起きたのだ。だか、なにがともあれ逃げれる。

「待て、お前ら」

 彼らはどんどん上空に上っていく。

 そして彼らはついに逃げ切ることができた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「はぁ、はぁ、はぁ」

 二人とも息を切らすほど急いで逃げてきたのだ。

      ・

 なんで今思い出したんだろう。電神と雷神は思った。

 そう、今もしかしたら殺されるのかもしれないからだ。

「電ちゃんいこう」

「うん。いこう雷くん」

 そう言って、彼らは気を引き締めて、三人と対決する。

      ・

「くらえ。落雷ッ」

 ズドーーン。

「おうおう。二回も同じ攻撃食らってたまるか。バリアを張るまでもないわ」

 三人は攻撃をうまく避けた。そして攻撃しようと走り。彼らの近くまで行った三人だったが、

「喰らえ」

 パンチを同時にかます三人(こうでもしないと、こっちがやられてしまうから)だったが、

 スカッ

「えっ。当たらない?」

「そんなもの当たるわけがない。こんな攻撃避けるまでもないね。かかか」

 余裕そうな表情で、ボスらしい笑い方をする二人。

「なるほど。電気だから実態がないわけか」

「そういうことだ」

 ご名答と二人は言う。

「さらに今のは、お前らに気を使ってやったんだぜ」

「なにぃ」

 高柳が過剰に反応する。

「面白いこと言ってくれるじゃないかよ。ハッタリなんじゃないか? 頑張んなくていいんだぜ」

 イライラしながら挑発する高柳。

「じゃあかかってこい。お前らは俺達に勝てない」

「チッ」

 高柳が舌打ちをした。

「後悔すんなよ」

 高柳は一人で突っ込んでいく。

「おい高柳。挑発に乗るな」

「そうよ。罠かもしれないのよ」

「大丈夫だ。こんな奴に能力なしで勝てるわ。」

 完全に挑発に乗ってしまった高柳はパンチを再びかまそうとするが、やはり当たらない。さらに、

「ぐぁーーーー‼︎」

 ばちばちばち

「なっ!」

 一体なにが起きた。相手は攻撃してこなかったぞ。

 触れない敵をどう倒せばいいのだ。

      ・

「高柳。奴は触れると感電するらしいぞ!」

「なに!」

 触れられないのに、さらに感電するとか。どう倒すか。敵は奴ら二人だけみたいだから能力を使えるが、

「おいおい、なに止まってるんだよ」

 グシャッ。

「がはっ」

「高柳!」

 速い。全然見えなかった。

「高柳、かずき。こっちに」

「ああ。高柳動けるか?」

「動けるが、奴のスピードが速いのが厄介だな」

 そして、三人を囲うようにユウナがバリアを張った。が、

「バリアの中ってこうなってるんだね。あはは」

「ーー!」

 こいつら、いつの間にバリアの中に入ってきやがったんだ?

「確かにこのバリアなら攻撃を防げるが、この中に敵が入っちゃ意味ないだろ。きゃはは‼︎」

 バリバリバリーーー。

 ドサッ。

「なっ」 

「ぐっ」

「まさか、バリアの中に入ってくるとはね」 

 なんてスピードだよバリアも通用しないかい。

「おいおい。まさかお前らその程度でくたばってんのか。笑わせるぜ。今のは手を抜いてやったんだぜ」

「まずいぜ。このままじゃ負けるな」

 多分コソコソ術をってわけにいかないだろう。奴が見逃すわけがない。

 すぐ実現すれば、すごい能力なんだけどな。だけど、自由に使えるわけじゃないけど。

 バリバリ。

「ぐはっ」

 今の声は、電神と雷神。奴がやられてる?誰に?

「やっぱり雷の攻撃は聞くのね」

 この声。どっかで聞いたことがある。確か、

「あんたら、こんなところでくたばってんじゃないよ。ほら、形成逆転ってところを見せてやろうぜ‼︎」

「お前は、神谷楓。なんでこんなとこに」

「まあ、別に用があってきたんじゃ無いけど、なんだか厳しい展開だったから、どうせなら借りを返そうと思ってね」

 そうか、ありがたい。

「だけど、お前どうやってきたんだ?」

 なんでここがわかったんだ。疑問を抱いていたんだけど、その答えは驚くものだった。

「私を忘れないで」

「雛か。そうか。お前なら何処にでも移動できるのか」

「そうよ。便利でしょ? まぁ、今回役に立つのは、私の能力じゃなくて」

「私の能力が今回の鍵となりそうね」

 ?

 分からなかった高柳が色々と考えていると、

「私は写真の中に写っているものなら、どんなものでも一枚につき一回のみ、現像可能なの。だから、なんの能力だって使える。だけど、その能力は一日しか使えないけどね」

「それで十分だ。それは、高柳に渡すことができるか?」

「できるわよ。ただし、持てるのは一人だけだから私は能力失うけどいい?」

「問題ない。頼む」

「高柳。今から奴の電気能力を渡すわよ」

「ああ」

 楓は、体の集中力を高めて、

「よっ」

「おっ。すげー電気能力ってこんな感じなんだな。ていうかもしかして……」

 むむっ。ばちばちっと電線の電気が高柳に移動していく。

「やっぱりそうだ。これ、電気量とかを操ることも可能だわ」

「それは本当か高柳」

「ああ。本当だ。だけど俺だけでは今くらいが精一杯だな。結構難しいぞ。計算したりするからな」

「それはすごい。とんでもない能力だ」

「そうなの?わたしにはよくわかんないけど、とにかくすごいんだね」

 ガラガラ。

 電神雷神が共に起き上がった。そして声を合わせて言った。

「ぐっ。まさか攻撃が当たるなんて思わなかった。何故当たる?くそ。今度は奇跡なんてものは起きないクソッタレが」

「かかってきやがれ。お前ら」

 ここからが本当の勝負だと言って、幕が上がる。

      ・ 

「喰らえ」

 高柳は、能力を使って時速百キロほどで走っていき、拳を振りかざす。

「触れないお前が俺を倒せるか。カウンターを食らわせるまで」

 電神と雷神はバリバリと電気をためていて、構えもしなかった。それは本来なら、当たる攻撃ではないと思っていたからである。しかし、

 バキィ。

 雷神の、頰の辺りにパンチが入った。

「なにぃ。何故当たる?」

「俺はお前らと同じ力を手に入れたんだよ。電気には電気だ」

「なにぃ。ふざけんな。チートだ‼︎」

 二人は、しばらく荒い息を整えるため落ち着こうとした。

 冷静になれ。

「そんなことしたって俺たち(私たち) を倒せるわけがない」

 そんなことは絶対にないと首を振る二人。

「これで終わりだ」

 高柳は日本刀を、能力で転送して取り出した。妖刀高柳。自分で作り出した刀。その刀に雷をまとわせた。これなら当たるはずだ。

「なっ。それは、日本刀。そんなもので俺たちを殺せるとでも」

「……」

 さあてうまくいくかな。高柳は心の中で"あること"を不安に思うが、

「喰らえ」

 電気を集めて撃ち放った電神雷神、

「はっ‼︎」

 斬‼︎

 電気の塊と、電神雷神二人ともまとめて真っ二つに切れた。何故かその時、血は流れなかった。

      ・

 幼い彼らはある時、酷く、とても怖い思いをした。その時、彼らはなんて思ったのか。

「二人で強くなろう。誰にも負けないおとなになろう」

 こう思ったらしい。二度とこんな思いはしたくない。絶対にしてたまるか。死んでたまるか。生きてやる。と幼き子供達は思った。

 それからというもの彼ら二人で修行をして人間まに負けないようにした。

 自分たちの力の全てを知って、使えるようにした。攻撃を受けてもカウンターを食らわせるように電気を常に纏えるようにした。自分自身を電気にして攻撃が当たらないようにした。雷のように素早く動けるようにした。しかし彼らにも限界があった。いくら、能力者でもできないこともある。

 上には上があることを知る。

 彼らは迷った。「これでは無敵になれない。人間どもに、完全なる復讐ができない。どうすれば、能力者どもを倒せる。どうするどうする」

 彼らは迷った末に一つの方法を思いついた。彼らは思った。

「これなら無敵になれる。絶対に負ける気がしない。二人なら絶対に負けない」

 一人で戦おうとせず、二人で戦う。そうすれば、強さも二倍。二人で一つとなる。それこそ最強。

「電ちゃん」

「雷くん」

「これからもずっと一緒にいよう」

 この二人はとんでもない信頼で結ばれていた。この人なら一緒に居られる。いろんなことをしたい。死ぬなら一緒がいい。そんな感情を持てるようになった。最初から、生まれた時からこの感情を持っていたのかもしれない。

      ・

「電、ちゃん」

「雷、く、ん」

「合体、しよう。それ、しか、な、い」

「そうね。わたしも、そう、思って、た」

 ビリッ。ビリビリッ。バチっ。バチバチッ。ドクン。ドクン。ドクン。ドックン。ドックン。

「なにが起こるっていうの?」

 ユウナがかずきに聞く。

「分からない。だけどなんだかやばそうだとは思う。今まで以上の電気エネルギーが集まって来ている。二倍以上、いや数倍か?」

「良かった。まだ死んでいない」

 安心する高柳。

「やっぱり復活するよな。許せないよな」

 フッ。

 笑う高柳。

「じゃあ俺は、面白いことするかな」

 そうして高柳はなにやら術を唱え始めた。

「まずいぞ。十倍以上もの電気エネルギーが集まっているぞ。このままでは間違いなくこの辺は、いやもしかしたら街が一つ綺麗サッパリ消えるかもしれない」

「ええっ。じゃあどうすればいいのかずき?」

「ユウナ。お前、電神雷神の周りだけバリア張れるか? もしそう出来たら、被害は出ずに済む」

 かずきはユウナに聞く。

「いや、分からないけどやってみる」

 ユウナがかずきに促されるまま、バリアを電神雷神の周りに貼ろうとした。

 しかし、

「やめろ‼︎」

 高柳が大きい声で止める。

「ええっ、なんで?」

「今から面白いもん見せてやっからよ」

「馬鹿言うな。街が一つ飛ぶかもしれないんだぞ」

 かずきは、遊んでいる場合じゃないと訴える。しかし高柳は、勝算があるように自信たっぷりな顔で、

「大丈夫。俺を信じろ」

「……。絶対に止めろよ」

 かずきは、高柳に賭けた。

「わかったわ。絶対に止めなさいよ」

 ユウナも同じく、高柳を信頼した。

「わかってる」

 高柳は、ありがとうと思いながら、言った。

「なかなかいい信頼関係じゃない、あんたら」

 楓が言う。

「そこまで言ったら見せてもらおうかな、その面白いやつってもんを」

 そう言って楓と雛は、少し離れたところに座り、観戦するようだ。

 ビービービーーービキキカキキカコーーカカキーーーー。

 キュインキュインシュウシュウシュウパッ、バチバチバチッ。

「我は電雷神。合体したものだ。準備はいいな?」

 電雷神は聞く。

「それはこっちのセリフだね。待ちくたびれた。早くしてくれ」

「どうやら、一刻も早く死にたいようだな。ならば望み通り。喰らえ‼︎」

 そう言って、すぐさま手のひらから電気の塊を出して、投げてきた。こっちにバチバチッと言いながら飛んできた。

 大きさは、直径十メートルくらいだ。

「すげー気迫だな」

 よーしと高柳。

「喰らえ」

 そう言ってある技を繰り出す。

 

      ・

 高柳は技を出したのだか、ただの黒い野球ボールくらいの大きさの物体を電気の塊に向かって投げたのだ。

「あんなので止められるのかい」

「まあ見てな。よし」

 その黒い物体は電気の塊に入った。その瞬間。

「いまだ」

「システム、起動」

 そんな機械的な声が、電気の塊から聞こえてきた。

「なんだ?」

 電雷神は、不思議そうに見る。

「まぁ、誰にもこの力は止められないな。確実に街は消える」

 電雷神は笑う。

「もうだめだ。街がもたないよ」

「まだか高柳」

 ユウナとかずきは、心配そうに高柳を見る。

 街に落雷の被害が出そうになっている。本当にこのままじゃやばい。高柳のすぐ近くにまで来た電気の塊。そんな時。

 バチィーー。バチッビリビリッ。バリバリ。

「なんだ。なにが起きているんだ。」

 電気の塊は、急に動くのを辞めた。

 電気の塊からなんだか電気が出てっているような……。まさか、

「放電してるのか?」

「なにぃ。そんなことがあるわけがない。この私が操っている限り放電は絶対にないはず。まさか、まさかまさかまさかーー。ふざけんな。俺(私)たちの努力を無駄にするような能力があるなんて。もしかしてお前。いやだけどあんな短時間に術を唱え終えるわけがない」

 なぜだなぜだなぜだ何故だ。

「俺はさっきお前の能力を使わせてもらったわけだけど、わかんないかなぁ?」

「ッーーー」

 電雷神は今、ある事に気づく。

「やっとわかったみたいだな。そう。電気のように素早く動けるようになったんだから、術も早く組めるようになったんだよ」

 これが使えたら俺ほぼ最強じゃん。チート過ぎる力だ。

 バチィ。ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンコーーーーキィン。

「どんどん小ちゃくなってくな。どうだ。俺たちの勝ちだ」 

「クッ。ガッ。ガグゴゲギギギャーーーーーーーーー」

 ドゥーー。

 電雷神がどんどん衰退していく。予想以上に放電システムが強すぎたみたいで、電雷神までも放電してしまった。そのせいで、また、電神と、雷神に別れてしまった。

「よっ」

「システム完了」

 

 電雷神は衰退していく自分を見て、これじゃ強くなった意味ないじゃん。これじゃ電ちゃん(雷くん)も守れないじゃないか。今まで何のために強くなったんだろうか。守るためだろ。なにやってんだ自分は。自分が憎い。何で負けた。負けるはずがないんだろう。悔しいだろう。見返してやりたいだろう。だけどお前らの願いは叶わない。お前らはここでなにもかも終わり(ゲームオーバー)なのだ。

「俺たちは負けてしまった。ここで殺されて終わり、か」

「そうだねなんだか寂しいね。もっと雷くんと一緒に居たかっ

たなあ」

「俺もだよ。だけど、もう覚悟決めなきゃ。今までありがとう。電ちゃん」

「そうだね。こちらこそありがとう。雷くん」

 もし生まれ変わったらまた一緒がいいね。そんなことを思いながら、二人は少し悲しかったが、笑いながら眠りについた。

「キ。おい、ガ、ども」

 なんだ。なんか声が聞こえる。

「ガキども。起きろ。こんなとこでやられて悔しくないのか?」

 なんだ。俺たちは生きてるのか。

「何で生きてるんだ。俺たち?」

「はぁ、何言ってんだ。確かにお前らは死にかけた。だか死んでない。運が良かったな。お前らはこれで二人仲良くこれからも暮らせるぞ」

 はっはっはー。高柳は笑う。

 それとは対照的な二人は状況が理解できていないようだ。

「とっ。忘れるとこだった。お前ら二度とこんな悪さすんなよ。だけど、お前らなんだか悩んでいるみたいじゃないか。悩んでいるんだったら、俺たちに相談しにこいよ」

 優しい大人もいるんだぜ。高柳は、先程とは違って、優しい声で言った。

「何で、悩みというか、考え込んでることあるってわかったの?」

 不思議そうに声を揃えて二人は聞いてきた。

「なんだかお前らの行動は、ただ純粋に悪さをしているわけではなく、わけがあって復讐をしているように見えたからだ」 

 俺の観察力なめてもらっちゃ困るぜ。と、かずき。

「そういうわけで俺の能力で、お前らが寝ている間に二人の頭覗いてみた」

「なっ。おい勝手にみんなよ」

 結局見てるじゃねえか。観察力とかカンケーねぇな。

「みたの。勝手に?」

 二人はなんだか落ち着かない表情で言った。

「そしたらな、……お前ら辛かったな。これからは我慢しないで俺たちを頼れ」

 かずきは、二人に優しく言う。

「えっ?」

 電神雷神は戸惑った。

「いくら神でも助け合わなければ生きてけないだろ」

 高柳は言った。

「そうよ。大人に頼っていいのよ」

 ユウナは言った。

「お姉さん達にも頼ってもいいよー」

 楓と雛も言った。

「えっえっうぇ。ひっくっひっくウエーーーーーンうわーーーーん‼︎」

 電神雷神は、その場に泣き崩れた。 

「いいのよ。辛かったね」

「うっうっ。づらがっだよぉー」

「みんなぁありがどぉうぅぅ」

 神様だって辛いことがある。人間が勝手にすごいやつだなんていうからこんな思いをする奴がいる。人間は愚かである。知らずのうちに、人を苦しい思いをさせている。だけど助け合って頑張って生きている。神様だって同じはずだ。

 

 後日のお話。午後。

 ある神社では、

「高柳って、やっぱり優しいなぁ」

 ユウナがふと思い出したかのように言った。

「そうだな。あいつはすごいよ」

 かずきは同じように、過去を見る顔で言った。

「そうだよなぁ。好きになりそうなくらいにね」

 しまった、本音が。高柳が好きってことかずきにばれちゃったかな?

「お前はもともと好きだったんだろ。高柳が」

「ふぇっ」

 とっさに変な声が出てしまった。で、えっ、私が高柳のこと好きだってことが、元々ばれてたの。そんなバカな。誰にも言ったことないし。

「俺の観察力なめるなよ。」

 そうだった。かずきは観察力がすごいんだった。というか天才なんだった。全く油断できない。

「べっ、別に好きとは言ってないじゃん」

 声が裏返ってしまった。

「声が裏返ってるってことは相当驚いてるんだな。結構体に出てるぞ。多分、俺じゃなくてもわかるくらいにな」

 はっはっは。かずきが笑う。

「えっ。うそ」

 終わった。恥ずかしい。恥ずかしい。そんなに出ていたのか。

「恥ずかしいよぅ」

「声に出てるぞ。それと顔赤くなりすぎ」

 もうだめだ。これ以上この話題を話してると墓穴を掘りそうだから、話題を変えよう。

「そっ、そういえば、この前……」

 だめだ。話題が出てこない。相当焦ってるんだな私。

「それより、高柳、あいつなんであの二人を回復させる時、「うまくいくかな?」って言ったんだ? 確かに成功するか心配だとは思うけど、なんだか、それ以外のことでも心配しているように思えたんだ」

 さすが鋭いなかずきは。

 そう、物語としては書いていないのだが、高柳はあの後、電神と雷神が目を覚ます前、死にそうなところから回復させてあげたのだ。確かに高柳はそんなことを言ったのだ。

「それはね、かずきは知らないと思うけど、あいつにも辛い過去があってね。」

 ユウナはつい黙ってしまう。

「辛いことなら言わなくていい」

 そこまでして聞きたくないから、と。

「ありがとう。だけどあいつはあいつなりに頑張っているんだよ」

 今度は、高柳のお母さんみたいな顔をしていった。

「あの二人にこんな辛いものを背負わせたままでいいのか。そんな風に考えて不安だったんだと思う」

「そうか……」

 シンッとしてしまった。

 高柳は、そんなことを思っていたのか。だから、悩みがあれば、相談していいと言ったんだな。高柳は優しいのだとかずきは思った。

 

 そう、かずきにとって高柳の知られざる過去があった。かずきは人間である。無能力の人間だ。天才である。いくら天才でも、本当の神の神話は知らない。

 

 

 

 

 

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