第21話『スマホがアレして異世界に迷い込むよくあるやつ』だと思っていたのだけれど。
「――ソイツは
2012年から動画を配信し始めて、それなりに有名になったそうだ。
だが……2013年ごろの更新を最後に、ネット上では消息不明になっている」
周囲の人々が笑いながら酒飲み話に明け暮れる中、桐生は話を切り出した。
料理は来たが、ウーロン茶がまだ来ない。
どうもスタッフが少なくて、現場が回っていない居酒屋のようだった。
「異世界ユーテューヴァー……?」
私は思わずうさんくさげな声を出してしまう。
あまりに安直で、冗談めいた名前だと思ったからだ。
──ちなみにユーテューヴというのは、世界一再生されている動画サイトの名称だ。
今のご時世、知らない人間はいないんじゃないかってくらい流行っている。
「なんなのよその名前……。
コイツが流行りの異世界の様子でも動画配信してたって言うの?」
「ああ、そういうことになる。
実際に配信していたのは、異世界……というよりは、既存のコンシューマーゲームの世界といった方が正しいか」
桐生は頷いて、話を続ける。
「コイツは顔出しで『
だが……2013年の2月ごろの動画更新を最後に、行方しらずになっている。
それで、肝心の動画の内容なんだが、」
「え、ええっと、ええっとー……ちょっと待ってね。話を整理させて」
私は思わず桐生の話をさえぎった。
「貴方はこの『異世界ユーテューヴァー』が『管理者』の正体ではないか……って今思っているのよね?」
「そうだ」
「……それがどれだけ唐突な話だか分かってる?」
桐生は何も言わず、目を伏せる。私はため息をつきながら、
「そもそも私たちが異世界……の、ようなものに、巻き込まれたって話もあり得ない変な話だとは思うわよ。
だけど、それを踏まえても今の話は唐突すぎるわ。
桐生さん、そもそもあなたは一体どうしてこの人の情報にたどり着くことが出来たの?」
と、首をかしげた。
「『既存のコンシューマーゲームによく似た異世界の様子を顔出し実況付きで動画に上げるユーテューヴァー』……ねえ。
正直言って、
よくできたCGなんかの可能性の方が高いわ。
……そのあたりのところ、分かってる?」
「分かっているよ……」
そう言って眉間を抑え、ため息をつく桐生の声には、疲れと苛立ちの両方が感じられた。
「突飛だとは分かっている……。だが、他に手がかりがない。
完全に手詰まりになってしまっているんだ。
かろうじて見つかった手掛かりは、俺たちが迷い込んだあの『異世界』と似たような設定を持った、この動画シリーズだけでな」
「……」
「セラの生存は確認できた。
現実世界でのセラの体が、覚めることもない眠りについていることまでも確認できている。
……分かるか? エリザベート。
時間がないんだ。
なにしろアイツの精神はまだあの『異世界』にとらわれたままなんだからな」
桐生はそう言いながら、ポケットからもう一つ別のスマホを取り出した。
……セラのスマホだった。
「それ、貴方が持っていたのね」
「ああ。
結局これは……あの世界でセラに渡すことは出来なかった。
それが良かったのか悪かったのか、今の俺には分からない。
だが……おかげで俺は、このスマホに入っている情報を利用し、今のセラの体の無事を確認することが出来た。
セラは今、職場の病院に入院しているそうだ。とりあえず、生きている」
「生きているけど……でも心はあの異世界にとらわれたままなのね」
「ああ」
「あまり考えたくはないけれど、もうあの子の精神は死んでいるということは考えられない?
あの子がとらわれた先で……あの異世界で無事であるという証拠はあるの?」
私がそう尋ねると、桐生は無言でセラのスマホを操作した。
『無題』のアプリ……あの世界を行き来するのに必要だったアプリだ。
セラ以外の人間たちはおそらく現実世界に戻ることができたのだろう。名前が消えている。
しかし、セラの名前だけは……。
「……灰色……」
私はうめくようにつぶやいた。
「そうだ。
灰色だが……『名前自体は表示されている』。
つまり、セラがまだ生きていることだけは確定している。
だが、決して
「そうね。『アナタ』と同じで、このまま放置しておけば死ぬ……」
「その可能性が極めて高い」
私の前に二本の指を見せながら、桐生は続ける。
「現状、セラを助けるためにとれる手段は二つだ。
ひとつめ、『この世界からあの異世界に何らかの働きかけを行い、セラを救出する』。
ふたつめ、『あちらの異世界に直接乗り込み、セラを見つけ、全員で脱出できる方法を探す』」
「……なにそれ。
あまりに話がぼんやりし過ぎて、何をどうしたらいいのか分からないじゃないの」
「そういうことだ。
時間がないのに、『セラの精神があのゲームめいた異世界にとらわれている』という情報以外に事実上何の手がかりもない。
ここに来て打つ手がなくて、正直かなり困窮している。
倫理的に反することを承知で君に連絡を取ったことには、そういう事情もある」
「……かなり厳しい状態だわね……。
でもわかった、私もできる限りの情報を探してみる」
私が言うと、桐生はそのときはじめてようやくホッとしたような笑顔を見せた。
「そうか……本当に助かる」
「勘違いしないでよね。
セラのことなんか本当はどうだっていいんだから。
でも、いくらどうでもいいからってこのまま死なれてしまうのも寝覚めが悪いし……」
と、そこまで言いかけて、私は言葉を続けるのをやめた。
桐生がなんとも生ぬるい、ほほえましいものを見る目で私を見て苦笑していたからだ。
「……もう。
なんでもいいじゃない。
とにかく、協力するとなったらこまめな情報交換が必要だわ。チャットアプリのID、交換しときましょう」
そう言って、私はもう片一方の手で桐生に私のスマホを差し出した。
チャットアプリのIDを交換するためだ。
桐生はそんな私のスマホを見て、なぜか驚いたように固まっていた。
「……なによ?」
「……いや、若い子は怖いことをするんだな。
ほぼ初対面の人間と普通にアドレスを交換をするとは……怖いことになったりしないのか? あとで鬼のように連絡されて、めんどくさいことになったりは」
「アンタ年寄り? チャットアプリなんて、相手のことが嫌になればさっさとブロックしちゃえばいいじゃないのよ。
そんなんじゃこのご時世には誰とも仲良くなれないわ」
「……」
私がそういうと、桐生はとても傷ついた表情になった。
「なによ。また何かハッキングされそうな問題でもある?」
「……ハッキングではないが、問題はある。俺は年寄りじゃない。まだ30だ」
「……」
「オッサン呼ばわりされるまでならまだ我慢できるが、高齢者呼ばわりされるのは心外だ。
大事なことだから二度言うぞ。俺はまだ30だ。30は年寄りじゃない。繰り返す。30は年寄りじゃない」
☆
空気を切り替え、私たちは情報共有を再開した。
ウーロン茶はまだこないし、料理も全く減っていない。正直それどころじゃない。
「セラが『管理者』に襲われた時……同じくらいのタイミングで、空が音を立てて割れ始めたんだ。まるで舞台芸術が剥がれ落ちるみたいにな」
そう言って、桐生は視線を机の上にさまよわせる。
当時のことを思い出しているのだろう。
「ああ、それね。私も見たわ。多分同じタイミングで起こった出来事だと思う」
「そうか……あれはいったい何だったんだろうな。いや、考えても仕方ない話だな。
とにかく俺は反射的に空を見上げ、すぐにセラに目を戻した。
セラは倒れたままで、管理者はそんなセラに覆いかぶさろうとしていたところだった」
「食べられそうになっていたのかしら……」
「分からん。
……とにかく、そのタイミングで『アナタ』が何か叫びながら管理者に躍りかかった。たぶんセラを管理者から守ろうとしてくれたんだと思う。混乱はしていたし、何を言っているかは分からなかったが……悪い奴ではないみたいだったからな」
「そう……」
私はそう答えるしかなかった。
桐生はじっと手元のスマホを……セラのスマホをみつめている。
「俺はとにかく別の世界に移動しなければと思って、そこでようやくセラのスマホを手に取ったんだ。
そして……そこで意識が途切れた。まるで悪い夢から覚めるように、唐突に俺は『こちらの世界』で目を覚ましたんだ。
会社の机で突っ伏したままの姿勢で、セラのスマホを握りしめた姿勢でな。
妙な話だ……このスマホは、一体いつから現実世界の俺の手の中にあったんだろうな。
周囲には完徹中のほかの社員も何人かいたんだが、誰も俺が他人のスマホを持っていたことになんて気づかなかったらしい。
連日の徹夜続きだったから、ついに糸が切れて眠りこけているように見えたんだと。実際あの時の俺は七時間ほどあの世界をさまよっていたようだから、仮眠に思われても仕方なくはあったんだが」
「そうだったのね……」
と、私が目を伏せたタイミングで、やっと店員が飲み物を運んできた。
どうも新人だらけで混乱している状態らしく、普通に注文を間違えられている。
お酒を飲む気分ではなかったのだけれど……仕方ない。
「伝票の修正ってどうやれば……」と泣きそうになっている店員に注文の修正を求める気にもなれなかったので、私はそのまま甘ったるいスクリュードライバーに口を付けた。
「俺は今日まで仕事をしながら、セラの行方を追いかけたり、あの『異世界』になんとかもう一度行く方法がないか調べていたんだ。
だが……まるで駄目でな。
すがる気持ちで似たような異世界転移者がいないかどうか探していたら、この情報に行き当たった」
そういいながら、桐生は机の上に転がっていた自分のスマホの画面を指さした。『異世界ユーテューヴァー』の顔写真が表示されたままになっている。
「こんな与太話、いつもなら俺だって、くだらない話だと
セラを襲った『管理者』の顔だったような気がして仕方なかったんだ。だが、数秒見ただけの俺だけでは確信が持てずにいた」
「なるほど。それで、私を……エリザベートを探そうと思ったわけね」
私は嘆息した。
「そういうことなら……そうね。
私もやっぱりこの人は『管理者』の顔にそっくりだとは思うわ。
でもね、もしほかの人に『そんなことはない、他人の空似だ』って断言されたら、そうですかって引き下がる程度……簡単にくつがえせる程度の確信よ。私だって長時間あの顔を見ていたわけじゃないもの。
ねえ、この人、やっぱり胡散臭くない? ウケ狙いのCG芸人なんじゃないの?」
私は首をかしげながら桐生にスマホを押し返す。
すると、桐生はスマホを操作して、『異世界ユーテューヴァー』の動画を再生しはじめた。動画の中の、管理者によく似た男が喋りはじめる。場所はどうやら森の中のようで、自撮り棒にスマホをくっつけて撮影しているらしく、手ぶれが酷い。
「どうもこんにちはー、というわけで、今日はですね」から始まるよくある決まり文句に続けて、「今回はモンスタークリエイターⅢの世界にやってきましたァー」などと話している。
居酒屋の喧騒がひどいので、あまり音声を聞き取れない。私は思わずスマホに顔を近づけた。
……と、その拍子に、開け放された障子の向こうの別の席から、一人のスーツ姿の男性がこちらを見ていることに気が付いた。キリッとして綺麗な顔立ちの人だが……今はそれどころではない。
「……ええとこの実況者、今モンスタークリエイターⅢ? って言った?」
「ああ、1993年に発売されたコンシューマーゲームだ。世代的に、君は知らなくても無理はない。
この動画ではゲーム中に出てきたエルフの村を探検している」
「ふーん……」
私はそうつぶやきながらも机にはりつき、動画をじっと
異世界ユーテューヴァーは村の住人……エルフたちを行き合うたびに、「耳本当に長いんですねー」「髪綺麗っすね。触ってもいいですか?」と絡んでいる。エルフたちは若干迷惑そうにしていた。
「うーん……よくできた動画だとは思うけど……やっぱりCGなんじゃない? 逆にこれを『実際に存在する異世界を撮影したもの』って考える方が無理があると思うわよ」
「……やっぱり一般目線だとそう見えるんだな。
それについてなんだが……当時もかなりの議論を呼んだらしい。
だが、この動画はだな、素人はCGじゃないかと思ってしまうんだが、プロであればあるほど『とてもそうは見えない』出来の動画なんだ」
「どういうこと?」
私がそういうと、桐生は待っていましたとばかりにスマホを指さし、いかにも長そうな説明に入ってしまう。
……ヤバいスイッチを押してしまったかもしれない。
「そうだな、例えばこの男。今ほかのエルフの髪を触っただろ。ここの髪の動きが細かすぎる。CGでは不可能だ。それから、さっきから一緒についてきてくれている男。コイツが着ている服の布の動きの凄さが分かるか? 動きが少し変わるたびにシワのでき方も変わっている。これも実現不可能だ。リアルタイムGCだろうがプリレンダCGだろうが、コストがかかりすぎていて普通は作ろうとさえ思わない部分だな」
「リアルタイム?? プリレ????」
「で、そう考えると、ここで激しくスクワットに励んでいるエルフの服のシワも自然すぎて逆におかしいと思うだろ? ここまで手の込んだ作りこみ、今のトリプルエークラスのゲームだってやらないぞ。
それに、さっきからこの動画は手ぶれが酷いが、そんな中で不規則にはためいているここの旗、洗濯物、泣き叫ぶ子供、肥料の入った樽を落としてぶちまけてしまい打ちひしがれているジジイ、遠方で爆発しているデスビオス火山を笑いながら見ている実況主……こりゃ一体何なんだ? どんなバケモノGPUを使えば、こんな超重そうな動画をリアルタイムレンダリングで出力できる?」
「あ、あの、桐生さ」
「ついでに言うと、背景に突っ立っているペガサス三頭の毛皮や羽の質感と動きもCGでやるには要素が多すぎて現段階の技術では実現ふかの」
「ちょちょちょ、ちょっと待って! 一気にそんなことを言われても分からないわよ!!」
「……なんだ、意外と軟弱ものだな。セラは普通についてきてくれたぞ」
「私をあのコミュ力オバケと一緒にするな!! あの子は今、『核』としてあちら側にとらわれているの!!
……で、この動画の中で紹介されている異世界が、セラが閉じ込められている世界と同じ異世界なんじゃないか……って、貴方は言いたいのね?」
「そうだ」
「……」
私は黙り、桐生も黙る。
しばらくの沈黙があった。
なんとなくふすまの向こうに目を転じると、さっきのスーツ姿の男はもういなくなっていた。それだけ時間が経過しているのだ。
私は思わず自分のスマホで現在時刻を確認し、そして桐生に目を戻す。
……もう終電まであまり時間がない。
そろそろ帰った方がいい。
「……この『異世界ユーテューヴァー』が本当にこの一連の出来事の元凶であるとして」
冷めてしまっている料理を手早く口に放り込みながら、私は行儀悪く話す。
「この情報を手掛かりに、私たちはこれからどうすればいいと思う?」
「……詳しくはあとで動画を見てほしいが、この男は『異世界』に『召喚魔法』を使って人間を呼び寄せることが出来る……といった話をしていた。その召喚魔法とやらを調べて利用して、あちらとこちらの世界を行き来する方法を確立できないかどうか考えている」
「召喚魔法……」
私は長い溜息を吐き、思わず天井を見上げた。
──魔法。あまりに現実離れした概念だった。
あの異世界には確かに魔法はあるだろう。だが、それを自分たちが使えるかどうかというと……。
「……正気で言っているのよね?」
「ああ」
「正気で、自分が魔法を使えるって考えているのね?」
「……死ぬほど馬鹿らしくて仕方ないが、使えると考えるしかない」
それだけ桐生はつぶやいた。
嫌いなものを無理やり飲み下しているような顔だった。
「……それもこれも、セラをあの場所から取り返すためだ。
推理にてこずっていたら、『現実世界のセラの体』が死んでしまう。アイツは生きて帰ろうって言っていたのに、俺だってそのつもりでいたのに……時間がないんだ、もう……」
桐生の言葉が途切れ、私も何も言えなくなった。
……食べ物はほとんど減っていなかったが、時間切れだ。今日はもう帰るしかない。
☆
夜は遅いが、周囲はネオンと蛍光灯とスマホの画面で昼間のようにきらめいている。
(……ほんの少ししか時間を共有していないはずのセラにあそこまでこだわっているってことは)
居酒屋を出て桐生と別れ、駅までの道を歩きながら、私はぼんやりと考えた。
(桐生は好きなのよね、あの子のことが)
なんとなく、あの異世界で分かり易いまでにお互いを意識しあっていた桐生とセラのことを思い出す。
――もしも本当にくっつけば、多分似合いのカップルになる……と思う。
不器用すぎて私的な人付き合いが苦手そうな印象のある桐生だが、セラとはかなり打ち解けて話していたように見えたし、セラもそんな桐生を全面的に信頼しているように見えたからだ。
悪くない組み合わせだと思う。
自分のことなんかどうでもよくて、人の恋路が三度の飯より好きな私としては、本来ならばニヤニヤが止まらない話だ。
……そう。『本来ならば』。
(でもこのままでは、多分セラは助からない……)
私は目を伏せて下唇を噛み、大通りの雑踏の中を立ち止まった。
先ほどの、居酒屋での桐生の様子を思い出す。
何でもかんでも理詰めで説明したがる桐生にしては珍しく、『セラを助ける方法』については妙にふわふわとした話しかしていなかった。
つまり……彼もどうしたらいいのかわかっていないのだ。本人もそう明言していたけれど、状況は絶望的だ。
そんなことを考えていると、ふいに目の前で誰かが立ちどまった。
通行を妨げてしまったのだと思い、私は反射的に身を引こうとする。
「あ、ごめんなさ……い?」
身を引こうとしたのだが、当の人影に肩をつかまれ、その動きを阻まれた。
思わず相手の顔を見る。
見覚えのあるようないような、年の若い青年だった。
「……やっと見つけた」
そう言って、青年は笑った。
「お姉さんのこと、待っていたんだよ。さっき居酒屋で面白そうな話してたでしょー? 『核』とか『異世界』がどーのとか。
俺も話に混ざりたかったんだけどさー、社長に飲まされてて動けなかったんだよねー。ま、その社長はいま撒いたところなんだけどさ」
立て板に水を流すようにペラペラとしゃべられて、私はあっけにとられるしかない。
男はそんな私を見て、へらりと笑った。端正だがどこかガラの悪い笑み、そして声に、なぜだか覚えがあった。
「……俺もその『異世界』に覚えがあるんだよ。」
私はただ固まったまま、男の姿を見つめていた。
……そうだ、今はっきりと思い出した。
さっき居酒屋でこっちを見ていた人だ。
いや、それだけじゃない。もっと前にも。
(うそでしょ)
私はがくぜんとした。
──異世界でセラとした会話を思い出す。
トラックエンディングを目指す前のセラに、「桐生の現実世界での正体がなぜ分かったのか」とツッコみを入れたことがある。
正直到底ありえないことだと思ったからだ。
だがなぜかこの時の私にも、目の彼の正体がぼんやりと分かってしまった。そう、コイツとは異世界であったことがある。この人は、多分。
――青い髪の男。
【本編を読み進めるうえで何の参考にもならない登場人物紹介(ややネタバレ版)】
■ セラのスマホ
セラがうかうかパスコードを喋ってしまったために、蒔田はこのスマホを覗きたい放題見たい放題になっている。本来はご家族のもとに預けられるべき代物だろうが、これを手元に置いておくために(セラの救出方法を探すために)、蒔田はかなり危ない橋を渡ったようだ。
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