第5話

 「酷いこと言うですね。あなたに会うのはいつも目の正月ですけど。ああ、傷ついたわ、いっそ目の玉を飛び出しちゃおうかな」女の童が言い出した。おかっぱに黒い浴衣姿である。

 「愛しいお嬢ちゃんじゃないか。江口の知り合いかな?ったく、江口、君って目の保養だけはいつでも欠けないね。何か秘訣でもあるのかい?」

 「冗談をよせ。カオス、帰ろう。博士にはすまないけど、改めてアポを取ろう。こいつより危険な奴この世にいないから」

 「あの世にはたくさんいますけど?そう焦らなくても良いと思いますが。いくら江口さんがモテモテとはいえ、別に我は貴方に会うためにここへ来たわけではありませんよ?そもそも私、貴方が来るなんて完全予想外のことですが」

 「それもそれで良い知らせではあるが、しかし、白々皐月、なんの形であろうとも、お前と同じ空間にいるのは御免だぜ。もう行こう、カオス、これ以上ここにいるとまずい」

 「はあ……」無序は怪訝そうな顔をしている。件の装置を着ければ多分「?」の嵐が来るだろう。

 無理もない。この状況で、どう見ても一番おかしな奴は僕であることはちゃんと自明している。

 正常な奴本当にいるというのなら。

 「我ながら嫌われたものですね。まあ別に気にしないけど、江口さん、友達として、貴方がこれから取ろうとしている行動について、勿体無いと言わざるを得ませんね」

 「いつどこかでお前と友達になった覚え、全くないぜ?白々しい物言いをするんじゃねえよ。これからお前とここで話すことこそが勿体無いだ」

 「けらけら。なるほどなるほど、江戸っ子は五月の鯉の吹き流し、というのはこれなんですね、愉快愉快。友人たる我がここまで言われるのも甚だ心外ですけど。まあ、江口衛門さん、またつまらんことを聞かせるのは申し訳ないけど、一つだけ、忠告をしても宜しいでしょうか」

 「僕を石川五ヱ門みたいに格好良く言うのはありがたいけど、しかし白々、要件があったら早く言え。ちゃっちゃっとじゃなくて、さっさと、疾く疾くとトークしろ」

 「忙しいで何よりです。ルパン並みの多忙な方ですね、江口さん、ある意味ルパンよりも幸せかもしれません。なにせ、到頭可愛らしい不二子ちゃんとめでたしく良縁を結ばれていたから」

 「お前との腐れ縁はルパンと銭形警部ほどのごとくけどなあ。ルパン三世の話もどうでも良いから本題に入ろ」

 「弐口博士に会えるのは、今日だけです。最初で最後です」

 と、釘が刺された。

 

 「君たち、蚊帳の外ってどういう感じなのかは分かるかい?次元大介の気持ちも、少し考えてくれないかな」


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