第34話  GWと居候・Ⅱ (没34)

     『G W と 居 候・Ⅱ』           (没34)

 去年のGWは散々な目に遭って、来年こそはGォージャスでGゥレイトなWィークの正に黄金週間にするぞ!と意気込んだけど、現状が過去の努力の結実であるとすれば少々去年の頑張りが足りなかったようで、残念ながら今年のGWもさしたる期待は持てそうにないと思えた。そして現状を変える事の難しさにしばし溜め息を吐く時、もう「来年こそは!」などと強がらずに、好きな『レット・イット・ビー』の歌詞を思い起こして「ケセラセラ」で行く方がいいと自分をなだめていたら、来年どころか明日の運命さえ分からない真実に得心する出来事が起きた。

 わが家の居候が突然私たちの前から消えて妻はいわゆる『ペット・ロス症候群』に罹った。逆縁を嘆く母のように戻らぬ日々を思い出しては涙する妻の姿を見るのが辛く、私は(命あるものは二度と飼わないと誓いつつ)妻に何か他の趣味を勧めた。それでも彼女は平静を装って「楽しい事もイッパイあった」と反論するものの憔悴ぶりは甚だしく、最早、妻の心を癒すには没価値夫の力では及ばず、再びペットに頼るしかないと諦めた。

 ふとした切っ掛けで(これもまた妻の策略のようだったけど)第二の居候(になるか忠犬になるかは未だ不明!)を買う事になって、その受け取りがGW中と決まった。京都から電車と車を乗り継いで総計五時間の長旅に、生まれて五十日にも満たないチビ君が耐えられるだろうか?と道中を案じたけど、車に移ってペットボトルの空箱から解放された後は元気そのもの! 何事もなくわが家に辿り着いた事に生後数時間で生き延びる術を会得する動物の能力に感心した。そして翌日の昼からは部屋中にオシッコを垂れ流しながら走り回るチビ太に翻弄されつつも、未知の環境に旺盛な好奇心を示して直ぐに適応する天成の資質に改めて感嘆。リビングのど真ん中に鎮座するサークルに、お仕置きで入れても五分と掛からずに脱出可能なチビは来てまだ数日というのに既に家族の一員になりきって妻を(更に私も)癒している・・。

 お陰で今年のGWは、名前も付けて貰ったチビ君に振り回されて仕事を思うままにできなかったけど、何と言っても家族が増えるというGゥッドでGゥローリーなWィークになって、ようやくわが家も人並みの黄金週間を過ごせた、とほくそ笑んでいる。

 予想外の行動で人心を和ませてくれるペットは家族の一員だからこそ、『躾はとにかく最初が肝心』と釘を差されたのは、ブリーダーの家で初めて会った瞬間から『可愛さ』にメロメロの私たち(実は私!)の心中を見破られた為だろうか? そして二代目はワガママ犬にしない、と先代の気ままの責任を微笑みながら当て付け合ったけど、はしゃぎ疲れてお気に入りのクッションで今はスヤスヤとお休み中のチビ君が、わが家のギャングになるかゴッドになるか、ワクワクだなぁ!

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