第29話 焼き肉パーティー (没29)
『 焼き肉パーティー 』 (没29)
人生の楽しみの一つに出会いがある。そして時に自分の人生を変えてしまうほど大きな力を持つものが、本との出合いであり、人との出逢いである。私の人生を変えたある本との出合いは又の機会に譲るとして、今回は人々との出会いについて独断を・・・。
かつて独身時代の人生の設計図に『K』という地名はどこにも見当たらなかった。偶然にも大学生の時、半島を一周する貧乏旅行をして神宮から滝に向かう途中、確実に『K』を(しかも国道沿いにある妻の実家の前も)通過したにも拘らず、「まさか私が後に移り住むとは・・」当時はお釈迦様でも(閻魔大王でも)ご存じあるまい。
ところが現実に今住んでいるという事実はまさに私の知り得ぬ『運命』の一つだったに違いなく、妻となった女性との出逢いから私の予定外の(おっと失礼!)様々な人々との出会いが始まった。
先日も知人宅にて焼き肉パーティーを開いたが、たまたま私の町内は私と同世代の者が町内会とは別に(婦唱夫随の)仲間の会を結成している。冠婚葬祭はもとより何かにつけては一杯会を開いて、ミーハー話から「神の国」論まで一言居士のそれぞれが独断と偏見の持論を展開しているけど、気心の知れた仲間との酒はいつも美味しく、時の経つのを忘れさせてくれる。
恐らくどんな社会であろうと、いつの時代であろうと、全てに自分が満足のいく生活環境で暮らせるはずはない。人生は否応なしに他人と関わらざるを得ないという点で、隣近所に関しては(現実に殺人事件にまで発展したケースもあるけど、勿論そこまではいかないにしても)大方の人が何らかのトラブルを経験している事だろう。
例えばある女性と出逢っても結婚するかしないかの選択権は自分の側にもあるものの、隣人や町内の人々との出会いでは当方に選択権はない。それゆえ、いかに「快適な」隣人に巡り会えるか・・が実は人生で非常に大切な要素となる。仮に隣近所を調べた上で移り住めば大した問題は生じないし都会ではそれも可能だろうが、代々その地に住み続けている田舎では簡単に隣近所を代える事はできないし、自分が移り代わるのも難しい。
結局、隣近所との共生では受忍しなければならない事が多々ある以上、自分のストレスを和らげてくれる宴と仲間を持つ私の住環境は、他の町人も羨む部類に入ると自慢しても良いはずだ。更に、『遠くの親戚よりも近くの他人』と、これだけ近所にゴマを擂っておけば私の身に何かあった時は必ずや例の仲間たちが助けてくれるに違いない。
ほろ酔い気分の私が『リップ・サービス』をウィンクに隠して焼き肉を取りにいくと、(転んでもタダでは起きないツワモノ揃いのアタシらを安易に信じるようでは、アンタもまだまだ甘いわ)と呟く声が?・・・。
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