第9話  GWは・・・

 『 G W は ・・・ 』 (没9)

(毎年、ゴールデン・ウィークを迎える度に「今年は?」と惑い、「今年こそ!」と期待するのだが、終わればいつも・・・)

 失業率は過去最悪。大学生の就職も超氷河期、と世の中は明らかに景気が悪いはずなのに今年のGWは海外へ行く人が過去最高を記録したらしい。2000年問題で正月に休めなかった反動があるにしても、ニュース等を見ていると、「世の中、ホンマに景気が悪いんかいね?」と、己の不景気だけを疑って暗澹たる気持ちになる。

 現実には、リッチな一流企業のサラリーマンは全体から見ればほんの一握りの人達で、彼らと公務員ばかりが大型連休を楽しんでいるに過ぎず、日本を支えている労働者のほとんどは中小企業に勤めている人達と勤勉で質素な(零細)自営業者である。

 自営業は定年もなく、働けば働いた分だけ儲かるじゃないか・・と、しばしば贔屓目で見られるが、今の景気で高笑いを決めている商売人は私の知る限りでも数えるほどしかいない。それゆえ土曜休暇すらない自営業者の所に嫁に来た多くの妻達は、特にGWを目の敵にしてサラリーマンや公務員の奥様方を羨むけど、「隣の柿は甘く見える」ように恐らくそれぞれの妻達にも喜びと同時に他人の知り得ぬ苦労があるに違いない(かな?)。

 今年のGWは最大9連休。もちろんそんなに休めない我々夫婦は、意を決して連休中の一日だけ『名古屋』に行く事にした。

 デパート好きの妻と買いたい物がある私は共に朝早く起き、喜び勇んで出かけたものの都会はどこに行っても人人人。久しぶりに美味いものでもと思ったら、どの店も大行列。その上、目当ての商品はことごとく品切れで入荷の予定も分からない・・と、散々な目に遭い、妻は歩くのもままならない人ごみに酔って気分を悪くした。

 結局、夜遅く帰ってくる予定を早々に切りあげてわが家にたどり着いた私達は「実にムダな一日だった」とぼやき続けたが、慣れない都会を中年ジジババが徘徊すれば疲れるのは当たり前で、まして買いたい物は今やパソコンで居ながらにして手に入るのに、と揶揄されて益々、貴重な休日を浪費しにわざわざ出歩いた己の浅はかさに落ちこんだ。

 さらに追い討ちをかけるかのごとく、大学生や社会人になった近所の子供達はGWに郷里に帰って来たが、わが家の子供らはとうとう声の便りすら届けてこなかった。世は春たけなわと言うのに没価値男家には訪れの兆しさえ見えず、一体どないなっとるんや・・と今年のGWは過去最強のGッ痴・Wィークで終わったが、来年こそは有名になってブランド品を買いに行くGォージャス・Wィークか、何日も休めるGレイト・WィークのGWにするぞ!と、儚い望みを抱きながら疲労困憊の心と体にムチ打って、また明日からGゥワンバル・Wィークを始めよか・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る