第7話 男も女も・・・
『男 も 女 も ・・・』 (没7)
女性の美しさとは何だろう?
確かに若さは美しい。一人の女性の一生を外面的な美しさという観点から振り返れば、恐らく何の化粧も(補正も!)しないで通る十代が最も美しい時期、と断定しても異論はないだろう。しかし、美しさとは外から見えるものばかりだろうか?
肉体は年齢と共に確実に衰える。明らかにハリがタルミに、肌のシロさがシミに変わって美しさにホコロビが見え始めると、女性はそれらのマイナス分を埋めようとエステに凝ったり、時には整形に救いを求めたりする。けれども仮に六十代の女性がシワ一つなく、三十代の体形を維持していたら、果たして人々は何の疑いも妬みも持たずに心から、その女性を美しい・・と認めるだろうか?
ミスコンで優勝した女性のプロポーションの美しさを否定するつもりはないが、その女性に『ホモ・サピエンス(知恵ある人)』としての美しさも同様に備わっているかどうかは、残念ながらマニュアルどおりの受け答えと微笑みからでは読み取れない。
賢明な女性は、永遠に変わらない美はむしろ作り物の世界と看破し、自らの加齢と共に失った肉体の代償に様々な知力を得て、美しさには内面から発するものも必要と気づく。時に白髪まじりの婦人のさりげない仕草にハッとする魅力を感じて、美しさとは必ずしも老若が左右するものではなく、肉体と知力のバランスが取れた女性こそ真に美しい、と確信する。(あるいは外面的に美しい女性であればなおさら同様に知力でも本物の賢明さを見せなければ、世の男どもが外見の美貌や豊満な肉体に狂喜する姉妹にも、「所詮どっちもまがい物」と口をすぼめて、そっぽを向くひねくれオヤジもいる)
ところで、近頃は美の価値観が変遷して男も美しさを求める時代になったとは言うものの、(没男としては)美は女性の特権に譲るとして、『男の魅力』って何だろう?
男の場合も若さは魅力の一つに挙げられるに違いないが、若いというだけで美を誇れる女性と違って、男は若さだけでは売りにならない。例えば確実に若さは失われているにも拘らず、若い頃よりも今の方が遥かに『カッコいい』と認めざるを得ないオッサンたちがいる。それは女性には大敵のシワやシラガが男には年齢がかもし出す『渋さ』となって、それぞれの人生を歩んできた証も男の魅力の一つと言えるからだろう。また青年期は明らかに自己チューの時期だが、全てを包みこむ真の寛容を会得して、許しの美学に気づくのも人生の後期かも知れない。
結局、男でも女でも歳相応の知力、体力、所作が美しさの原点に違いない。下手な細工をろうして若作りを試みても所詮バレるとしたら、ありのままの己を晒す方が潔い。そして精一杯、心の若さを維持するために没男は未だ見果てぬ夢を大切にしようか・・。
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