アキレス腱を断裂してしまったバドミントン選手が再起へ向かう奮闘記――それ以上の説明は必要ない、著者さんの実体験を綴るエッセイです。
リアルなんですよね。ケガをした瞬間は意外に冷静なんですけど、そこからじわじわ現実や絶望が実感されてきて、体だけじゃなくて心までも蝕まれていく過程が。しかもそうなってなおお仕事やお金にまつわる問題あれこれが押し寄せてきて、呆然ともさせてもらえないわけです。これが語れるのは著者さんがきちんとした社会人だからこそですね。そしてそれを感情に流されることなく客観視して描けてらっしゃるのは、すばらしい書き手魂ですよねぇ。なかなかできることじゃありません。おかげさまで読む側も、身につまされつつ適度な距離感をもって体験を共有(特にギプスつけたことのある方!)できるのです。
突然襲ってきた災いと向き合い、付き合い、踏み越えていこうとする人間ドラマはまちがいなく極上ですよ!
(「幕開けはフルスイング!」4選/文=髙橋 剛)