第19話 誕生日
金曜日は、装具のソールを1cm抜いて低くし、
リハビリの日。
3cm、あまり違和感はない。
理学療法士も
「だいぶ柔らかくなりましたね。痛くない程度に足は、動かして下さいね。」
と言ってくれた。
この日は、私の誕生日だ。
T君から、
「今日、お店行きます。入れますかね?」
とメッセージ。
「大丈夫よ。」
「送別会があるそうなので、いっぱいになるでしょう?」
「だといいけど、予約もないし。いっぱいでもT君は別格だから大丈夫。」
というやり取り。
4月は、歓送迎会の時期。
団体のお客さんが来ないと困るんだけど。
あきちゃんにお店まで連れて行ってもらう。
前日から、高校の同級生が手伝いに来てくれていて、
片付けは出来ている。
開店してすぐ、
KさんとSさんが、来店。
「お誕生日おめでとうございます。」
その手には、お花とたくさんの食べ物。
冷えたビールや酎ハイ。
お寿司、焼き鳥、枝豆、サラダ等々
毎年、4月には、4月生まれのお客さんを集めて
4月の誕生日会を開催していた。
岩国寿司を始め、私が料理を作って、
みんなでお祝いをするというイベントをずっと続けていたのに
今は、料理は出来ないわけではないが、
買い物することや運ぶことがままならない。
なので、今年は、全てのイベントが中止。
そんな中、一緒にお祝いしようと、夕食を食べずに来てくれたのだ。
その後、団体さんいらっしゃ~い。
私の誕生日とは知らずに来たIさんと中国の人。
「誕生日おめでとう。かんぱーい!」
と日本酒で乾杯。
ほどなく、T君たちも来店。
みんなで、
「おめでとうございます!」
と乾杯。
その後、送別会の御一行様も来店。
そろそろ、座る席がない。
部長や課長が、カウンターの中に立っている。
手が回らないので、A部長が、水割りを作ってくれる。
部長から指示されたMさんは、お花を買ってきてくれた。
松葉杖の私に
「ママさんは、座ってて下さい。僕らで何でもやりますから。」
と言ってくれる。
彼らは、私がいた会社の後輩にあたる。
子供くらいの若い子もいる。
A部長は、私がアキレス腱を切った現場にいた人。
「指導だけでも来て下さいよ。明日も練習やりますから。」
と言ってくれたが、まだちょっとね。
ひっちゃかめっちゃかになって、グラスは割るわ、椅子から転ぶわ。
お客さんが、楽しそうに語らいながら飲んでいるのをみるのが私は好きだ。
このためにお店をやっているのだと思う。
楽しい時間と空間を与えられているという喜びがある。
本当は、ビルの出口まで送っていくのだが、
今は、店の中で送り出す。
笑顔で
「早く良くなって下さいね。」
「ゴルフ行きましょうね。」
など、声をかけて帰って行った。
家に戻ると、長時間座っていたため、
足の甲から指までが浮腫んで、膨れ上がっている。
お風呂で温めて、その後1時間くらいマッサージをする。
腫れていると、指を動かすことが出来ないのだ。
楽しかったけれど、やはり疲れた。
やっと寝たのが、朝の8時。
今日は、ゆっくり寝よう。
でも、起きたのは、2時間後。
ゴロゴロして過ごす。
昨年の誕生日は、何も知らずに来たお客さんが1人だった。
一昨年は、誰も来なかった。
誕生日が嬉しいとか、お祝いして欲しいとか思っているのではないけれど、
「おめでとうございます!」
と言われて、乾杯してもらえるのは、嬉しい。
来年は、お返し出来るかな。
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