第18話 優しい社会
松葉杖生活が続いていると、今まで気づかなかったことに
気付くようになる。
手紙をポストに入れるのも
最近は、街中にポストがないので、
郵便局へ行くのだが、
駐車場から遠いと、ためらってしまう。
先日も色々考えて、小さな特定郵便局を選択。
コンビニと同じ場所にあり、
駐車場からすぐ入口だ。
それでも切手を買わないといけない。
窓口に座っていた女性が、小走りに出てきてくれた。
手に封書を持っているのに気づき、
「お預かりしますね。普通でいいですか?」
と聞いてくれた。
「はい、62円と82円切手も欲しいです。」
と言うと、封書の重さを測ってくれた。
切手も何種類か用意してくれた。
「切手お貼りしていいですか?」
と貼ってくれた。
市役所より、感じがいい。
外食したくても、松葉杖で入れるか、
靴を脱がなくてもいいか、
段差はないか、
隣の人とぶつからないか、
などをまず考えてしまう。
友人がある回らないお店に行こうと誘ってくれた。
久しぶりだ。
3年は行ってないな。
待てよ。
あそこは、座敷とカウンターだ。
端っこならいいけど、それって予約出来る?
電話して聞いてみた。
カウンターは、空いた席から順番なので、場所は指定出来ないとのこと。
仕方ないので諦めて、回転寿司にした。
おんまく寿司というチェーン店。
ここは、バリアフリーで、2つのレーンがあり、
ボックス席、カウンター合わせて210席もある大型店だ。
行ってみると、入口には、車椅子が3台用意されている。
広い店内。
ボックス席に案内してもらう。
子供が喜ぶ新幹線が走ってくるレーンだ。
車椅子は、使わなかったが、杖をついた高齢者の方が、
車椅子を利用して、ボックス席に座っていた。
車椅子用のトイレもある。
なかなかここまでのお店は、ない。
100円寿司ではないが、居酒屋メニューなども多くて
楽しく食事が出来ました。
障害者や高齢者に優しいお店が増えるといいな。
ちょっと買いたい物があって、ドラッグストアに行った。
その日は、なぜか、足が痛かった。
前日、指を動かす練習をし過ぎたか。
片手に松葉杖でリュックを背負って、カートを押す。
1歩1歩が痛みを伴う。
なので、長くは歩けないと思い、
どうしてもいる物だけ3点をカートに入れた。
途中、お店のスタッフさんが、
「お手伝いしましょうか?」
と声をかけてくれた。
「大丈夫です。もう終わりですから。」
と強がってみせる。
わずかな距離だが、レジが遠く感じる。
レジの女性が、
「お車ですか。後でお持ちしますね。」
と言うので、
「リュックに入れたいんです。」
車を降りてから手に持てないからだ。
「分かりました。」
先ほど声をかけてくれたスタッフさんが、すぐに来て、
商品をリュックに入れてくれた。
「これで大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。カートを返してもらえますか?」
「大丈夫ですよ。お気をつけて。」
笑顔で言ってくれる。
その日、満開だった桜がさらに美しく感じられた。
迷惑にならないように、お客さんが少ない時間に行くようにするけれど、
それでも、買い物には決心がいる。
仕事復帰のため、コピーを取りたかった。
どこならあまり歩かずに行けるかを考える。
意外にダイソーのコピー機が入口にある。
たいしたことではないはずが、
コピー機の蓋を開けるのでさえ、
手が届かない。
松葉杖があるからだ。
何とか、やりましたよ。
昨日から、営業の仕事にも復帰。
車の運転は出来る。
しかし、店内に入ることは出来ない。
ケガをした左足は、血行が悪いのか、
足先がいつも冷たい。
なので、車は暖房を入れて、窓を開けて走るという。
1時間走ると、一旦装具を外して、マッサージをする。
そんな感じなので、あまり仕事は出来ない。
でも、お店の人からは、
「無理せんでいいよ。」
と優しい言葉をかけて頂く。
夜のお店も、お客さんが、
「いいよ、座ってて。自分で水割り作るよ。」
と言って下さったり、申し訳ないですが、
回復したら、恩返ししよう。
今夜は、雨予報。
早く帰ろう。
松葉杖の私は、傘が差せない。
ビルから出ると、雨が降り始めていた。
まだ、本降りではない。
早く帰ろう。
優しい人はたくさんいるけど、
社会として優しいかは、色々と考えさせられる。
うん、気づいたことは、提言しないとね。
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