守るべき大切なモノ
────学校の最寄りの駅、それは俺も毎日利用する、一部の学生にとっては最も頻繁に利用する公共交通機関.......
そこに、今、トモキの呼びかけで二人人の男女が到着した。
「来てくれたか」
トモキも今着いたらしく、息を切らしているようだった。
「かなえは、一体トモキになんて伝えたんだ?」
「かなえは、俺に助けを求めてきたんだ
.......」
「今日の朝の事と関係があるのか?」
「ああ」
そう言ってトモキは俺たちに事の一端を説明してくれた。
物語の始まりは、この学校の入学式まで遡る。
「お母さん、今まで応援してくれてありがとう」
「いいのよ、かなえのためだもの」
花園かなえの母、花園志津代の夫である、花園達夫は科学者で、今から五年前、アメリカの研究チームに入り、日々科学に没頭していた。途中から家への仕送りも無くなったらしく、所在が掴めていないそうだ。
「でも、お母さん、入学費とか大丈夫だったの?」
「頑張れば何とかなりますよ」
花園志津代は当時、かなえのために借金をしていた。夫が帰ってこないということで基準を満たせず、近場の不良まがいの集団から金を借りていたのだ。
志津代には分かっていた。高額の利子が返済できないということも.......
彼女が入学した半年後、志津代は過労のため寝込むようになった。すると、定期返金を契約していた不良集団が、かなえの家に押しかけたという。
「あと少しで母は回復します。私もお金を稼ぎます、なので.......もう少しだけ待っててください」
この時から彼女の謝罪生活が始まった。学校のみんなにはバレないように隠していたらしい。
もう少し早く言ってくれれば、そう思ったが、自分がその立場に立ってみると、やはり、自分もそうしていたのかもしれないと思った。
────そして今日、そのしわ寄せが来たという訳だ。不当な高額請求、明らかにかなえの母は咎められないだろう。しかし、彼らには武力がある。そこで最後の一助けを俺たちに頼んだということだ。
「ある程度は分かった。かなえはどこにいる?」
「それが.......途中の話で、かなえは定期返金ができなかった場合、自分の体を引き渡すと約束したそうだ、ここが駅で、少し先の公園が約束の場所らしい.......」
「集合時間はいつなの?」
唖然としていたゆうかが、状況を整理したらしくトモキに聞いた。
「九時だ、今が文化祭が終わって、八時くらいだから、残り一時間か.......」
ヤンキー相手に学生が立ち向かうなど、絶望的な話だった。しかし、俺たちは今まで色んなことがあったが、全て乗り越えてきたんだ。ここで諦めたら、今までの事は無意味になる。
「おし、俺に考えがある」
「考えがあるのか?」
「ああ、俺には希望の二文字しか見えねぇよ」
「お前はいつも.......そうだな、俺はお前について行くさ」
「私も協力する!」
俺とトモキの二人は、頭脳明晰なトモキと、冷静だと言われる俺が相まって、ヤマトモにできないことはない、とまで言われている。 ゆうかだってこれでも凄いやつだ。今日あんなことがあったのに全く動じていない。
待ってろかなえ、今俺たちが助けるからな.......!
「さあ行こう、約束の地へ」
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