知恵の聖拳、宵闇にゴングは鳴り響く

 俺たちは、約束の公園へと辿り着いた。

 なんの変哲もないこの公園、少し違うところといえば、照明が少なく、辺りに気が生い茂っていて、外からは中の様子が見えない。犯罪の専門家がみたら、一番危ない公園なのかもしれない。

 そんな考察を考えながら、俺たちは木陰に身を潜めていた。

「ところで────」

 ゆうかが、なるべく小声になるように、小さく息を吸って

「これは何?」

 ゆうかの手には、花火セットとライター、そして

「ねり、飴.......」

「遊びに来たんじゃないんだよ!?」

「まあ、作戦を聞いてからにしてくれよ」

「聞かせてもらおうじゃないか、ヤマトの考えを」


「俺の考えはこうだ」



────「ふむ、よく考えたな」

「敵が武力ならこっちは知能だ、やれそうか?」

「できるできないじゃない、とにかくやるんだ、失敗したときの事は考えるな」

「そうだよ、私たちならできる!必ず救おうよ!」

 仲間たちが頼もしい.......

 必ず成功させてみせる、いや、しなくてはならない。

 現在時刻は九時五十五分、あと五分でスキンヘッドがやってくる。


 ────そこに、花園かなえがやってきた。キッチリ五分前行動.......

 俯き加減な彼女、しかし、その姿からは美貌は消えてはいなかった。

 

 どれほど完璧な人間にも、弱点はある。


 彼女もまた、その例だ。普通なら、自分のケツは自分で拭けなどと言われるのだろうが、今回はケースが違う.......

 彼女に非はないのだ。

 だから、だから俺達が救わなくては行けない。

「かなえ」

 俺が声をかけにいくと、かなえは満面の笑みで────

 「きて.......くれたんだね」

 眼には沢山の涙が溜まっている。溢れんばかりの涙が。

「男が来たら、真後ろに全力で走れ、事が終わるまで隠れていろ」

「分かった」


 ついに.......スキンヘッドの男がやってきた.......

「ゆうか、いけ!」

 ゆうかは花火セットの中に入っていた煙玉を出した。

 煙玉は昼間ならそれぞれの色の煙を出す。この宵闇の中ではその色は確認できないが、音も少なく、まさに逃げるための道具と言えるだろう。

「かなえ!走れ!」

トモキの指示にかなえが応じた。

「なんだこりゃあ!」

 男の怒鳴り声が聞こえた。地響きかと思う程大きな声だった。

「ゆうか、木陰でスタンバイ!トモキ、一気に畳み掛ける!」

 煙の中をスキンヘッドが出てきた。

「おい!女は何処だ!」

「.......っ!!!」

その声はスキンヘッドの後ろから聞こえた。

「ったく、なんの騒ぎだ?」

 タバコをふかした、リーゼントの男が後ろから出現した。

「うそ.......だろ.......」


 敵は、二人いたのだ.......

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