夕闇に紛れる小さき悪魔
────「お兄さん、いくら高校生だからって同じ学校の後輩に手を出しちゃあ.......」
「だから違いますって!」
そう、俺は痴漢容疑を掛けられていた。故意ではないという俺の主張で、駅員に事情聴取をされていたのだ。
「私はまだ信じられません、周りの人に聞いてみてください」
その後輩女子が冷たい声で言った。
「それじゃあ聞いてくるから、君たちはこの部屋で待ってなさい」
もう一人の駅員を小さな部屋に残し、恐らく上の立場であろう駅員が、その場に立ち会った人達に話を聞いていた。
「なんでこんなことに.......」
「この変態、それはこっちのセリフですって、貴方もしかしてあの東条ヤマト!?えっと、覇気がないのに最近モテてるって噂の.......」
覇気ってなに?てかみえんの?能力者さん?それより、何故俺がモテてるって話になっている.......
「覇気がないのは置いといて、お前、後輩って言ってたけど見覚えないぞ?」
俺はこの時、
「私の事知らないんですか?陰キャですね、山岸なみえですよ、あの」
知らないだけで陰キャって、てか「あの」って自分で付ける人初めて見た気が.......
「おい君!容疑は晴れたよ。自称教師の碇と名乗る人が君がボタンを押そうとしている所を見ていたらしい!」
────またあの人に助けられてしまった.......あの人、いつも電車乗ってるんだな。俺はそう考えて少し微笑んだ。
一駅分タクシー代を使ってしまったが、無事に家に帰ることが出来た俺は、玄関すぐのリビングに入った。
「ただいまー」
「あ、
「ん?お兄ちゃんだろ?そんな言葉どこで知ったのかなー?」
「ほら」
妹はそう言って俺にスマホの画面を見せた。モザイクの入った俺の顔と、事件の瞬間が写っていた。
「SNSで話題だったんだよ、その後投稿した人が間違いでしたって言ってたけど」
なみえ、お前のトゲトゲしい言葉遣いも世間に晒されて丸くなりやがれ.......!
────やる事を終えて、自分の部屋に行き、疲れ果てた体をベットへ投げ出した。最近段々寒くなってきたので、ベットの包容力をより強く感じられた。すると、枕の横に置いてあったスマホが揺れ、ベットのスプリングによって俺の体に伝わった。見てみるとトモキからだった。俺は眼を擦り、電話に出た。
「今日あれから怪しそうな後輩の女子に会ったか?何か接触をしてくると思っていたんだが.......」
「ああ、二人会ったぞ、一人目は、ずっと笑いながら話してた八重桜さき、二人目は冷たい印象の山岸なみえってやつだったな」
そう、この二人はどちらも怪しかった。しかしトモキもすかさず確認してくるあたり、流石だと思った。
「髪型とかは?」
「八重桜さきがポニーだったが、話が終わると下ろしていた。山岸なみえはストレートのロングだったぞ」
「分かった。何かあったらまた相談してくれ」
やはり優しい、トモキすら陥った恋、その実態は計り知れないようだ.......
そう言えばさきは文化祭とか言ってたな、 今年は何か、違う雰囲気がする.......
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