険しい旅の一歩
全ての授業が終わり、放課後のチャイムが鳴り始めると、俺は真っ先に屋上へ続く階段へと向かった。
────そう、今日が約束の日だ。
俺が階段を登っていると、足音が二重に重なって聞こえた、誰かいると思い踊り場で振り返ったが、誰もいなかった。
「来年の最終日は早く寝よう、多分疲れているんだ」
そう思っていた……
俺が最初に屋上に着いた。屋上には、ゆうか、かなえ、そしてトモキの順番で入ってきた。
「一体どうした?登校初日に大事な話があるとか何とか」
「そう、大事な話がある。」
俺は深呼吸をして……
「俺はまだ、恋というものを全然分かってない。だから……俺は卒業までにそれを必ず見つけて結論を出すつもりだ!わがままだけど、これが今の俺の気持ちなんだ……」
「ヤマトらしいっちゃヤマトらしいね……うん、わかった、ヤマトもあんな状況じゃ答えも出せなかったと思うし……」
ゆうかはそう言って微笑んだ。
「私も、ヤマトに直接告白できてない」
かなえは少し悔しそうにも見えた。
「俺だって、初恋の相手をそうそう諦められるわけではない。本人の前で恥ずかしいが……俺も卒業までにかなえに認められるよう、頑張ろう。そうと決まれば、俺らはライバル宣言、ヤマトは恋を探す旅、ってことだな」
「ああ、そうだ」
俺は無知なまま生きてきた……こんなんじゃラブコメ主人公のような人にはなれない。ここが俺のスタート地点だ……!
「ところで、さっきから盗み聞きしてるお前は誰だ?」
「「「えっ?」」」
トモキ以外の三人は驚いた。
トモキが屋上階段の扉に向かって言い放った。それと同時に階段を急いで降りる音が聞こえた。
「だめ、もういないみたい」
トモキとかなえが真っ先に追いかけたが、誰かは分からなかった。
「特徴とかはあったか?」
「シルエットだけは見えたわ」
「スカートを履いた女子生徒で、リボンは一年生の赤だった……それ以外はわからん……」
「そうか……一体誰が……」
結局、盗み聞きの犯人はわからずじまいだった……
────階段を戻る途中に、トモキが声を掛けてきた。
「人気者のかなえと、何故かモテ期のきているヤマト、合わせて男女四人の恋愛事情が漏れた訳だ。何があるか分からない、気をつけろよ」
「ああ、厄介な事になりそうだ……」
トモキとヤマトは嫌な予感がした……
今まで何もなかった俺たちに、盗み聞きをする奴まで出てきたのだ。不安は募るばかりだった……
そんな中でもヤマトには使命がある。彼女たちの感情を必ずや紐解かなければならない……
「まずは、改めてあいつらの事を、心の内まで知らなければな……」
「誰の心の内を知りたいんですか?ヤマト先輩っ」
────唐突に話しかけて来たのは、今まで話したことも無い一年生の女子だった……
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