残酷にして最も美しいラヴソング

  ────俺は混乱していた……

 今まで、人に好きなどと言われたことはなかったからだ。

  何秒かした後、俺はまず、隣にいるゆうかに目を向けた。

「そんな……かなえも好きだったなんて……そんなのないよ……」

  泣いていた。幼なじみの涙を見るのはこれで二回目だった。一度目はというと、小学生の頃、上級生に絡まれていた俺を、彼女は弱いながらも助けてくれた。その勇気の涙こそが、俺のみた最初の涙だった。そのくらいゆうかは強い人なのだ。そんな彼女が、今、俺への気持ちで涙していた……

「ヤマト!もう出てこいよ……いろいろ付き合わせて済まなかったな……幸せに、な……」

「そんな!まてトモキ!どこ行くってんだ!」

「帰るに決まってんだろーが!!」

  トモキは、時間より少し早めに来た彼の親の車に乗り、涙ぐみながら帰って行った……

「ヤマト、聞いていたのね…...」

「ああ、すまない、トモキと約束してたんだよ……」

「変な形で伝えることになっちゃったね……ごめん、私もう帰る、今日のことは忘れて?」

  忘れられるかよ……こんなこと。

  そう思っていたが、原因が自分なのでかなえの足を止めることは今の俺には出来なかった……


 ────その後、ゆうかも帰り、俺は電車で帰ることにした。

「恋ってそんなに大事なのかよ……」

 帰りの電車でボソッと呟いた。自分は何もしていないのに周りの人間はどんどん傷ついていく。ヤマアラシのジレンマのように、棘を持つ俺は近づことしても相手を傷つけてしまうんだ……

  親友も、友達も、仲良くなれたと思った人も……

  よくよく思えばそうだったんだ。いきなり花園かなえが話しかけてきたのも、恋心を持ち、甘さを変えたアイスティーだってそうだった。ラブコメ主人公は、いつも鈍感で人を傷つける。残酷で無慈悲、それが恋というものなのかもしれない.......


「恋なんて、いい事ないじゃないか……」


「それは違うぞ!東条!!!」


「……碇先生!?」

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