地平線の向こう側に……

  俺が今日女子達と共に海に来ると誰が昨日の時点で予想できただろうか。

「みんな、着いたぜ」

  窓から海が見える。海と空の境目が、一直線の水平線でしっかりと別れている。空も海も同じ青という色とは言えないほど、それぞれ綺麗な色だった。

  俺たちは早速水着に着替え、海で遊ぶことになった。

「東条!今日はこの後バーベキューするから後で買い出しいくからな!」

 海に向かい、走りながらトモキがそんなことを言ってくる。うん、初耳だ。

  もうどうにでもなれと思い俺も全力疾走で海に飛び込んだ!

「ヤマト水飛んだじゃない!」

  ゆうかとかなえが集中攻撃で水をかけてきた。

  ああ!これぞ青春!


 ────そんな楽しい一時を終え、俺はお昼のバーベキューのため、トモキと買い出しに行っていた。

「なあ、東条」

「なんだよ」

「好きな人いるか?」

「いきなりだな!」

  こいつ、どうしたんだ?いつもは恋愛なんか興味ないのに……

「真面目に答えてくれ、いるか?いないか?」

「いない」

  俺は素直に答えた。はっきり言って恋愛なんて、やっても意味がないと思うし、俺は自分の今があれば十分だと思っていた。

「お前はいるのかよ」

  俺は逆に聞いてみた。

「ああ、いるさ」

「まあ、いてもおかしくないだろうな」

  おかしくないとは言ったが、心の中では少し驚いていた。トモキは俺と知り合ってから、あまり恋愛の話、俗にいう恋バナというものしていなかったのだ。

「ちなみに……誰なんだよ、その、好きな人は」

「花園かなえなんだ」

「そうか……」

 俺はなんて返していいか分からなかった。友達の好きな人を聞いても、俺には恋愛経験がほとんどなく、アドバイスもしてやれない。

「大丈夫か?学年一の美少女だって言われてるんだぜ?」

「大丈夫か大丈夫じゃないかじゃなくて、俺は、花園の事を好きになっちまったんだ。あいつ、誰に対しても優しくて、そんな姿に途中から憧れるようになっていったんだよ……」

「俺にできることはあるか?」

「このバーベキューの後に、夕暮れの砂浜で告白しようと思う、それで二人っきりにしてくれ。今日はそのために誘ったんだ。すまない!わがままな俺の用事に付き合ってくれ!」

「本当にかなえのことが好きなんだな……おし!任せとけ!」

 トモキは大切な親友だ。俺は精一杯手伝うことにした。


 ────「遅かったじゃない!」

「すまん、ちょっち長引いた!」

  ゆうかが怒ってきたが、相談に乗っていたとは言わず、言葉を濁した。

「俺からも、遅れてすまない。みんな腹減っただろ?食べよう!」

「「うん!」」

  肉や野菜を網の上に乗せると、炭火に焼かれ、いい匂いがしてきた。

「う、うまそう……」

「心の声とヨダレが漏れてますけど」

 かなえがトングを使いながら俺の方を見て言ってきた。仕方ないじゃないか……うまそうなんだし……

「熱っ!」

「おい、大丈夫か?俺代わるよ」

「あり……がとう……」

 女子は結構こういうの苦手だからな。

 それよりトモキはどこに行っているんだ?

「いやーすまんすまん、ちょっと親に連絡してたわ」

 連絡?車を出るときに時間はトモキの親が言ってたし、おかしいなと思い、俺はこっそりトモキに聞いた。

「ほんとは何してたんだ?」


「緊張すると腹壊すタイプ」


  ダ……ダセェ……!!

  本当にこんなんで大丈夫なのだろうか……

 真上にいた太陽が、バーベキューの時間が経過すると共に西に傾き始めた……

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