フクロウの俺が知的なテレビ番組に出演した件

タカテン

フクロウの俺が知的なテレビ番組に出演した件

 まず最初にこれだけは言わせてほしい。

 これを読んでいるみんなもそうかもしれないが、俺だって騙されたんだ。

 

 だってな、あいつらは「『森の物知り博士』と呼ばれるフクロウさんの知性を紹介する番組にしたいんですよー」って言ってきたんだぜ?

 だから俺としてもちょっとしたトリビアが紹介されたり、くだらない実験に付き合ってやったりして、マツコに知らない世界を見せてやるつもりだったんだよ。

 それが。それが、さ。

 

『さぁ、天才動物さんチーム、最期に残った大将のフクロウさんが見事正解したらハワイ旅行への挑戦権がゲットできます!』


 どうしてクイズバラエティに出る羽目になった!?

 しかもスタジオ、めっちゃ明るいし! 俺、夜行性だぞ! こんなライトに照らされたら問題を考えるどころか、見ることすら出来ねぇよ!

 

「リーダー、頼んだウホ!」

「あなたがチームの切り札クー!」

「頑張れ、フクロウ。お前なら出来ると、父さん信じてるぞ」


 そんな俺に声援を送る仲間たち。

 ご紹介しよう。上から順にゴリラ、イルカ、犬の皆さんだ。

 

 ゴリラは一般的に『森の賢者』なんて呼ばれている。

 怒ったらウンコを投げてくるくせになにが賢者だよと思っていたが、この番組で『林檎りんご』って漢字を読みやがった時は驚いた。

 さらに司会者から「よく読めましたねー」との問いかけに「いや、自分、椎名林檎さんのファンなんでウホ」と、人間が開発した動物翻訳機を介しての会話には耳を疑った。

 マジかよ、ゴリラのくせに椎名林檎聞くの!? だから「苦痛のない穴にさようなら」なんて詩的な表現をしたの!? 

 

 続いてイルカ。

 こちらも知能が高い動物として有名だが、番組に来たイルカはまさに別格だ。

 だってこいつ、胸びれで器用にスマホを操りやがるし。

 さっきから収録中にも関わらずぱしゃぱしゃ自撮りして、その画像でバズってやがるし!

 そもそも背びれで立って歩くって、お前、本当にイルカか!?

 

 そして犬。

 犬は古くから人間と共に生きてきた。だから人間には詳しい。

 でも出来ることと言えばせいぜいお手やおすわり、賢くてお使いぐらいなものだろう。

 勝った。ゴリラやイルカはともかく、犬には勝てる、そう思った。

 だけどお前、犬は犬でも白〇家のお父さんは反則だろ! あいつ、翻訳機がなくてもめっちゃ日本語しゃべるやん! 普通そんなん出来へんやん!

 

 さて、そんな賢すぎるメンツに囲まれて、どうして俺が大将リーダーを務めているのか。

 簡単だ。

 明るすぎて目を開けられずにいたら、その姿が知的すぎると大将に選ばれてしまっただけだ。

 ああ、もうヤダ。もう森に帰りたい。

 そもそも俺、その目を瞑っている姿が哲学者っぽいだけで、本当はそんなに賢くないしな!

 さっきまでの知識だって実は全部、カラスの奴に以前教えてもらってただけだしな!

 

『さぁ、フクロウさん。この漢字はなんて読むでしょうか? お答えください!』


 知らねーよ! そもそも目を開けれなくて見ることすら出来てねぇよ。

 あー、もう。こんなことなら俺じゃなくてカラスに出てもらったら良かった。あいつ、マジで賢いもんな!

 ああっ、カラス、カラス、カラス……カラスよ、俺を助けてくれ!

 

「カラス」


 あ、ヤベ。思わずつい口にしちゃった。

 

『おおっ、お見事! その通り、この文字は「からす」と読みます!』


 えっ、マジ!? マジなの!?

 割れんばかりの大歓声に、俺は心の中で小躍り、いや求愛のダンスぐらい派手に踊りまくった。

 奇跡だよ! 奇跡が起きた! カラス、マジありがとう! 俺、全フクロウの威厳をなんとか守りきれたよ!

 

『さて天才動物さんチーム、見事ハワイ旅行への挑戦権をゲットしましたが、この問題には一匹おひとりしかお答えできません。どちらがお答えしますか?』

「そりゃあこの流れからして決まってるウホ」

「リーダーにお任せするクー」

「白〇家の未来はお前に託したぞ」


 は?

 ちょ、待て!

 お前ら、だから俺は目を開けれな――。

 

『分かりました! ではフクロウさんにハワイ旅行を賭けた問題を出します。問題はこちら!』


 バンって効果音の後、司会者が「このアニメキャラの有名なセリフをどれでもひとつお答えください。ただしNGワードがひとつだけありますので気を付けてください」と言ってくる。

 うわあああ、もう最悪だぁ。

 なんとか奇跡でフクロウの面子を保てたと思ったら、またこんな試練が訪れるだと!?

 俺、フクロウだよ? フクロウって言えば『不苦労』なんて当て字を書いたりするんだぞ。なのにどうしてこんな苦労を背負わなきゃいけないんだよっ!

 

『さぁ、お答えください!』


 くっ、こうなっては眩しくて辛いけど目を開けるしかない。

 幸いにも知り合いのカラスはアニメオタクで、そのオタグッズコレクションを何度も見せられてきた。

 問題をちらっとでも見ることすら出来たら、もしかしたら知っているキャラかもしれない。

 

 俺は意を決して、うっすらと目を開けた。

 

「うわー、目がっ! 目がぁぁぁぁぁぁ!」


 が、ちょっと目を開けただけなのに、その一瞬にして目が焼き付いた。

 てか、ふざけんなテレビ局! フクロウにこんな眩しいスポットライトを当てるんじゃねーよ!

 こんなの、とてもじゃないが答えられる状況に……。

 

『おおっ、おめでとうございます! 見事正解、ハワイ旅行獲得です!』


 へ?


『ちなみにNGワードは「見ろ、まるで人がゴミのようだ」でした。いや、フクロウさん、お見事です!』


 マジ!? マジで言ってんの?

 やった! 嬉しい! でも、強烈な光を見てしまって痛い!

 俺はバタバタと翼をはためかせた。

 

「出たーーーーー! リーダー、歓喜の舞クー。この動画をアップすればトレンド入りも間違いなしクー」


 やめろ、イルカ。

 

「父さん、ワイハでサーフィンをやってみたかったんだ」


 ワイハってさすがは芸能人! でも、それぐらいあのCMでやらされてそうなイメージがあるんだが。

 

「自分はビーチで読書をやってみたいウホ」


 マジか!? さすがは森の賢者。

 

 歓喜に沸く俺たち天才動物さんチーム。

 が、この時はまさかハワイ旅行が単なるホノルル動物園への転園だったとは思ってもいなかった。

 なんてこった! ゴリラ、ウンコ投げていいぞ!

 

 おわり。

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