第12話
遠足の行き先は都内で有名なリゾートホテル=サクラコウジ。
名前から分かる通り桜小路グループが経営しているホテルで、外には巨大な遊園地、館内にはビッグサイズの温泉テーマパークがあり、子供に嬉しい仕様となっている。
特に今年は、桜小路家の御曹司が白雪学院に入学したとかで企業側も張り切っているとか。
俺自身、御曹司とはクラスは違うが、彼は夜瑠と同じ三組なので、休み時間毎に夜瑠の元を訪れる際たまに姿を見かける。
小学一年生
基本的に良家の子供は容姿が優れているので、顔面偏差値が極めて高いこの学院だが、彼の容姿はその中でも群を抜いていた。
数年も経てば奏時同様二つ名が付けられるに違いない。
話が脱線してしまったので軌道修正をする。
当日はリゾートホテルまで学校が保有しているというバスで向かう。一クラス一台なので、計三台。
バスは基本二人席。各席には扉が付いていて、閉めれば二人部屋に。また床にはカーペットが敷き詰められているとか。
もうあれだ。バスがホテルだ。
リゾートホテルまでの片道は一時間二十分。
バス内にトイレが設置されてるとかで、サービスエリアに寄ることはなく目的地へと一直線に向かうらしい。
そんな話を聞かされながら、俺は今バスの座席表を決めている。俺の相方は勿論真昼だ。
……勘違いはしないでくれ。決してボッチだからとかじゃないぞ。ちゃんと数人は友達ができているからな。真昼も既に十人近くの友達ができている。
だけど、やっぱり一番隣にいて落ち着けるのは長年共に過ごしてきた真昼なのだ。それは真昼も同じ思いなようで、ペアは即座に決まった。
……俺達は。しかし……。
「
「……」
真昼に言われて少し、いや、かなり心配になってきた。
今回の遠足は主にクラスメイト達との親睦を深める狙いがあるらしく、バス、ホテルの部屋、遊ぶ班、と同じクラスの人としか行動を共にできないようになっている。
休み時間の度に俺に顔を出させる二人の事だ。絶対に不満が爆発するに違いない。
どうしたものか……。
「わたしは夕ちゃんがいるからいいけど……二人とも一人だもんね。ちょっと可哀想」
「ホントにだな。少しでも
真昼の顔をマジマジと見つめる。
周りから瓜二つと評価されるだけあって俺と良く似ている。うん、これなら……。
「どうしたの、夕ちゃん?」
「……真昼、二人のために力になってあげる覚悟はあるか?」
「え、う、うん。あるけどなんで?」
「よし。なら、二人を楽します方法が一つあるんだけど……」
先程思い付いた作戦を話すと、真昼はパッと顔を上げた。そして俺の顔をマジマジ見つめて、ポンと手を打つ。
「うん、確かに! みんなに絶対に気づかないね!」
「まぁ、奏時でもたまに間違えるからな。誰かと話すときだけ気を付ければ誰にも気づかれないだろ。で、作戦を聞かせた上で、もう一度聞くけど……覚悟はあるか?」
「うん! もちろん! みんなで楽しまなきゃ意味ないからね!」
家に帰り、この作戦を朝日と夜瑠にも話すと二人とも申し訳なさそうな顔をしていたが、表情から喜びが滲み出ていたのを俺は見逃さなかった。
大分ハードだが、二日の辛抱だ。
頑張りますか。
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