第10話
「皆さん、入学おめでとう。私はクラス替えまでの三年間、あなた達の担任をさせていただく
担任―――狩野先生が軽く自己紹介をして、それから明日からのスケジュールについての話へと移った。
スケジュールの話といっても小学一年生に伝えるような内容なんてたかが知れており、
明日はオリエンテーション。授業開始は明後日から。
と、そんな感じで大まかに伝えられ、後はそれらが記載されたプリントを渡されただけだった。
「では、最後に自己紹介をしてください。それで本日の予定は終わりにします」
下校予定時間まで残り二十分を切ったところで、唐突に自己紹介が始まった。まぁ、ありがちな展開だから驚くことでもない。
自己紹介は簡易なもので出席番号順に一人一人立ち上がり、名前と好きなことを言うだけ。
特に際立った何かがあるわけでもなく、一人辺り約十秒で紹介終えることができるので淡々且つハイスピードで順番が回る。
そんなものだから、あっという間に真昼の番がやってきた。
「わたしは西四辻真昼と言います。好きなことは体を動かすことです! 三年間よろしくおねがいします!」
ガタッ! 勢いよく立ち上がった真昼は始終ハキハキとした声で自己紹介を終える。
さて、次は俺か。
ゆっくりと立ち上がり、顔を上げる。
すると、途端に周りがざわめきだした。
そう言えば、幼稚園に入園したときもこんな感じだったな。一年しか経ってないのにどこか懐かしさを感じる。
原因は言わずもがな。俺と真昼の容姿についてだろう。
「「「―――同じ顔だ……」」」
やはりそうだった。聞き耳を立てるまでもなくそんな言葉が耳に入ってくる。
二人で、このざわつき様だ。……四人共同じクラスだったら騒ぎになってたんだろうな。
なんて思いつつ、待つこと十数秒。ようやくざわめきが落ち着いたところで俺は口を開いた。
「西四辻夕立です。好きな事はのんびりすることです。三年間よろしくお願いします」
我ながらに無難な自己紹介が出来たと思う。
頭で捻っていた最低限の台詞を噛まずに言い終え、そそくさと俺は着席した。
全員の自己紹介が終了し数分後。
説明会が終わったのか、教室に保護者達がやってきてそのまま引き取り下校となった。
「学校はどうだったかい?」
帰り道。校門を抜けるところで父がそう聞いてきた。
すかさず朝日が答える。
「楽しくなかったです……」
「そうか。真昼は?」
「わたしもあまり楽しくなかったです」
「夕立はどうだ?」
「普通でした」
「夜瑠は?」
「つまらなかったです」
俺たちの回答を聞いて、父は苦笑した。
家に帰ると俺たちを出迎えてくれたのは大量の書類。全て習い事関連のものだ。
親的には最低でも三つは習わせたいらしく、今日はその三つが決められた。
決まったのはピアノ、水泳、生け花の三つだ。
有名ピアニストや元オリンピック選手、家元とそれぞれの分野において一流の人達が先生になってくれるらしい。
水泳以外は前世合わせてもやったことがないので不安であるが、一流の先生の指導の元、どこまでやれるのか楽しみでもある。
こうして学校生活が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます