第9話
入学式は滞りなく終わった。
いきなりフラッシュ攻撃を仕掛けてくる学校だ。式の最中に問題の一つや二つ起きてもおかしくないと思っていたが、特に何も起こらなかった。
せいぜい校長の長話がマジで長すぎて殺意が沸いたぐらいだ。式辞終わったかと思ったら雑談し始めたからな。
その比率は式辞一割、雑談九割!
話の構成比率おかしいだろ。
しかもオチがない詰まらない話を淡々と続けやがって。その口にチャックを付けてやろうかと何度思ったことか……。
式が終わると、新入生はHRのため教室へ。保護者は引き続き体育館に残って説明会だそうだ。
先導する職員に続き初等科が使うという校舎へと移動する。
案内された校舎は、規格外に大きく、校舎と呼ぶには少しばかり形状がおかしかった。ビル、と言われた方が納得できる。
校舎は何と驚きの七階建て。
一年は二階。二年は三階。三年は四階……と一学年に一階層与えられる。ちなみに一階は職員が使うらしい。
一階層丸々使えるのは嬉しいが七階とか上るのダルくね、と思ったらエレベーター付きだった。登校時間の混雑を防ぐため四台常に動いてる。
終いには全クラスに空調機器が備え付けられていて年中快適な気温で勉学を励むことができるだとか。
もういっそここに就職したい……。
それはさておき。
校舎に入るや否や、生徒達は砂糖に群がる蟻の如く、クラス分けの表が貼り出された掲示板に密集した。
各クラス40名。三クラスなので計約120名の人混みは、形成しているのが小学生とはいえ、簡単には突破できそうにない。
また無駄な労力を使うのもしんどいので離れたところで、何故か俺の後ろで固まってた姉妹達と待機すること五分。クラスを知った一陣、二陣の連中がエレベーターの中へと消えていき人混みが大分減ったので、すんなり掲示板の前まで行くことができた。
左から順に眺めると、最初に飛び込んできた名前は真昼だった。そして、その下に夕立と、俺の名前が……。どうやら俺は一組らしい。
自分の名前の下に俺の名前があることに気づいたのか、真昼は静かにガッツポーズを決め、二組三組と一人ずつ名前が記載されていた朝日と夜瑠はズーンと肩を落とした。
と、次の瞬間、二人して俺の肩をガシッと掴み揺さぶってくる。
「やすみ時間は絶対きてねッ!!」
「私のところもだよッ!」
「わ、分かった。分かったから」
思わずそう返すと、二人は切羽詰まった表情から少し安堵が混じった表情に変えて溜め息を溢した。
溜め息を溢したいのは俺の方だよ。貴重な休み時間が犠牲になることが確定したんだから……。
エレベーターで二階まで上がった俺は、教室まで送ってという朝日と夜瑠の要望を叶え、教室に入る。
教室には黒板がなく、ホワイトボードが設置してあった。そのホワイトボードには座席表の書かれた紙が貼ってある。
どうやら俺は真ん中の列の一番後ろらしい。出席番号順なので、俺の前の席は真昼だ。
周りに知っている人がいないからか真昼がずっと俺の方を向いている。まだ生徒が揃ってないから良いものの授業中とか話の途中だったら大目玉だぞ。
丁度良い機会だ。その辺も踏まえて注意しておくか。
「真昼。今は良いが先生が話しているときは前を向くんだぞ。こっちを見ちゃだめだからな」
「えー、むり……かも」
「見たら最後怒られるんだぞ? いいのか、怒られても? 先生は怖いぞー?」
「うう……」
後一息で押し通せそうだ。
「それに、先生に怒られたら席離されるかも知れないよ?」
「わかった。がんばる……」
最後若干脅しが入ったが、何とか約束させることができた。
ホッとしているのも束の間。真昼と会話をしてる間にクラスメイトが全員揃ったようで、スーツを着た一人の男性が壇上へと上がった。
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