第4話
早いもので更に二年ちょっとが経過した。
五歳になった俺達は今年からついに幼稚園に通うことになるらしい。
来年からは小学生なので少し遅すぎる気もするが、「一年間だけでも集団生活を体験してその大切さを身をもって実感してほしい」とか。
そんな理由で入園することになった。
予め言っておくが、通う幼稚園は少女マンガに出てくるような幼小中高大とエスカレーターで上がれる名門幼稚園ではない。一般の幼稚園だ。
その理由はとても単純にして明快。入園可能になる三歳からではなく、五歳からという途中参加なので名門幼稚園には入園ができないからだ。
両親は「入るなら絶対私立学校」と口を揃えて言っているが、幼稚園までは縛る気はないらしくすんなりと入園が決まった。
「はーい。みなさーん!! 今日からこのクマ組に新しいお友だちがやって来ましたよ! さぁ、四人とも」
先生の挨拶で俺を先頭にして
そんな三人とは裏腹に教室内のざわめきは大きくなっていく。その内容はどれも同じで、容姿に関してだった。
「わぁ……おんなじ顔だ」
「四人ともそっくり……」
一卵性の四つ子なので顔が似ているだけでなく、俺達は髪型も一緒。むしろ違うところは口調くらい。
そんなものだから、兄である奏時でさえも俺達が言葉を発しなければ誰が誰なのか判別に迷うくらいなのに、初見で見た人がその違いを見分けられるわけがない。さぞかし同じ人が四人いるように見えることだろう。
好奇心旺盛な子供達に注目されるのも無理はなかった。
「はいはーい。お静かに! では、自己紹介をお願いします!」
こういう場合は普通一女から言うべきだと思うが、肝心の
「
俺の発言で少しは緊張が解けたのか朝日、真昼、夜瑠と続き、自己紹介が終わった後ふれあいタイムになった。
子供達が弾けるようにして幼稚園の庭に出て個々の好きなことをしてはしゃいでいる。
子供のコミュニケーション能力は計り知れないもので、姉妹達も他の子供達の中混じり仲良く遊んでいる。元気だなぁ……。子供心を忘れてしまった俺にはあんな風にはしゃぐことは到底できそうにない。
遠巻きに眺めつつ、若干羨ましいと思っていると、小さな女の子がトテトテと駆け寄ってきた。
「あのね、今から、みんなで鬼ごっこするの! いっしょにやろ! たのしいよ! ね!」
キラキラと顔を輝かせて笑う女の子。
……卑怯だ。こんな笑顔で言われたら断れないじゃないか。
「はぁ…………。わかった。参加する」
「やったぁ! じゃあ、最初の鬼よろしくね!」
「え?」
「みんな!
わー! と散っていく子供達。
俺は……嵌められたのか? 幼稚園児に?
「ははは……いいだろう。やってやろうじゃねぇか!」
年甲斐もなく全力疾走して鬼ごっこを楽しんでいたことに気づいて羞恥心に悶えるのはまた後日の話である。
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